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実力も運のうち 能力主義は正義か?

実力も運のうち 能力主義は正義か?

実力も運のうち 能力主義は正義か?

作家
マイケル・サンデル
本田由紀
鬼澤 忍
出版社
早川書房
発売日
2021-04-14
ISBN
9784152100160
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「実力も運のうち 能力主義は正義か?」のおすすめレビュー

ハーバード大学の著名教授が切り込む、能力主義が引き起こす社会の「分断」

『実力も運のうち 能力主義は正義か?』(マイケル・サンデル:著、鬼澤 忍:訳/早川書房)

 東大なんてのはな、やり方次第で簡単に入れる――。テレビドラマ『ドラゴン桜』で弁護士・桜木建二は生徒たちこう演説する。日本は学歴社会だ。大学受験で偏差値の高い大学に入れば、それが能力の証になり年収の高い職に就きやすい。だから多くの受験生は、多大なストレスと引き換えにランクの高い大学を目指して必死に勉強する。社会に出てからも安心はできない。日本企業も成果主義へ移行しつつあり、毎期の人事評価が昇給やボーナスに反映されていく。

 勉強のできる者がよい大学に入り、仕事のできる者が高い給料をもらう。一見平等で合理的なこの社会に、一石を投じるのが本書『実力も運のうち 能力主義は正義か?』(マイケル・サンデル:著、鬼澤 忍:訳/早川書房)だ。著者は2010年に発売した『これからの「正義」の話をしよう』(早川書房)が日本でも大ベストセラーになった、ハーバード大学教授のマイケル・サンデル氏。能力主義にひそむ問題点について、『これからの~』でも論じられた「正義」の観点からひもとく。

2021/5/11

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実力も運のうち 能力主義は正義か? / 感想・レビュー

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ゼロ

能力主義(メリトクラシー)がエリートを傲慢にし、敗者との間に未曾有の分断を齎している。特に学歴社会が問題で、大学の在り方はどうなのか?を指摘している。確かに学歴を手に入れることは、本人の努力のように見えるが、それは勉強ができる親の経済力であり、努力ができるのにも才能は必要となってくる。つまりは、遺伝子も重要であり、自分の実力というのは、本人のものではなく、運であるという考えは分からなくはないが、救いはないように思える。疑問を呈することは面白いが、解決策があっさりとしていたので、そこにも力を入れて欲しかった

2022/08/28

ばたやん@かみがた

《成功者への単なるお説教ではない》本書を、社会的成功者に対して「あなたの『成功』はご両親が提供してくれた教育や生活環境や運による所が大きく、あなた自身の努力によるものは実は小さいものに過ぎない。だから社会的に不成功とされている人たちへの態度を改めなさい。」と言うような一種のお説教とだけ受けとると本質を見誤ります。社会的成功を「本人の努力によるもの」と見誤らせがちな社会的背景、取り分け銘柄高等機関の院卒などの学歴がもたらす地位報酬への正当化などに焦点を当て、学歴への競争から端から圏外にいる(1/2)

2021/12/26

R

能力主義という主張が生み出した、現在アメリカのゆがみと思考の変遷を解説することで、真の平等とは、目指すべき正義とはと問いかける本でした。非常に面白い。地位や金銭を得る資格が能力に起因するという考えが、それを得ていない人は努力が足りないと断じている現状、しかし努力では最早打破できない実情との乖離が、現代アメリカの混迷、エリート批判の根幹をなすのではという指摘だった。平等が機会を表すものならば、名門大学に入るというイベントに、一定水準以上の母集団からくじ引きでという解決は、興味深いと思った。

2021/09/06

KAZOO

能力主義とはいうものの家が金持で高学歴(最近は大学院を出ている)ということでの格差が進んでいるような感じです。それをサンデルが本当に実力主義であるのか、ということで問題を投げかけています。アメリカでは東部のエスタブリッシュメントへの反感がトランプ人気となっているようですが、そういう本人も金持の家に生まれて高学歴です。自民党を壊せと言った小泉元首相に似ているのでしょう。

2022/09/17

koji

例え不平等があっても、それが能力の差なら許せますか。それが本書の問いです。本書を読む前の私もそうですが、99%はYESと答えるでしょう。しかし、サンデル先生はそこに疑問を投げかけ、まず米国で起きた名門大学の不正入試工作を事例に問題の本質に切り込むことから始めます。そこから、キリスト教の労働観の変遷、65年前に能力主義の暗黒を問いかけたMヤング、米国政治の対立に論を進めます。結局、アメリカの分断に行き着き、結論として条件の平等、共通善、謙虚さ・寛容さを問います。概ね納得。では翻って日本は?これは私たちの宿題

2023/04/12

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