感受体のおどり
感受体のおどり / 感想・レビュー
iuba
すばらしい。読み終わるのが惜しく、先を知りたくてもどかしく、文章の上品でいながら激情の宿るさまが鮮やかで、至福の読書経験になった。精緻な文体が蜉蝣の羽根のように薄いひとひらをつむごとに、世界と、そこに息づく人びとの密度が増していく。ゆるゆると諦念を吐き出すような横顔に頷くことが多く、日常の僅かな傷を傷と見据える目にはっとする。三十五の掌編を十段の螺旋に組み上げる構成、男女の顔を明かさない人物たち、語られる世界の全容すらままならない。好き嫌いの分かれていく作品になろうが、体験してほしい。私は支持します。
2014/07/06
そうたそ
★☆☆☆☆ 「abさんご」だけで決め付けるのもなあ、とか思って受賞第一作も手にとってみたが、やっぱり全然理解できない。読めども読めどもストーリーも情景も全く頭に入ってこない。ストーリーとかそういう問題じゃなくて、ただ単に文章にクセがありすぎて全然分からない。たぶん「abさんご」より一層クセの強い作品なんじゃないかと思う。ひらがなを織り交ぜ独特の文章表現を用いた文体は美しいとは思うけど、内容が頭に入ってこないんじゃ意味ないよなあ。何一つ理解できなかった作品など初めてだった。もう読むことはないかな。
2014/01/13
zumi
まず冒頭、「男か女かときかれて、月白はどちらかと問いかえすと、月白が女なら男なのかと月白は笑った」ーーえ? 一番(全部で350番)ごとにメインの人物が変わって、それが章としてある程度まとまって連なり、また現れる見事な螺旋を表している。さらに登場人物の舞(回転・性の変化)、「見られながらにして見る」要素も加わってくる。個人的には二せんじかんや百びょうといった時間の表し方も好きだが、なんといっても各章の冒頭! これもズレながら「螺旋」的になっている... 個人的には前作よりも読みやすく、かつ面白いと思う。
2014/04/09
圓子
古典を読むような静かな映画を観るような。鮮やかな色を隠す強すぎる光。抑制された表現がかえってなまなまとした痛みを伝える。普及した名詞は他者が創ったものでしかないのなら、どうして自分の身に沿う言葉をつくっていけないことがあろう。
2014/02/04
kambashig
日本舞踊の師匠への恋心を中心に、「私」と踊り、物書き仲間、勤め先、子ども時代それぞれの人たちとの関わりを断片の積み重ねで描く。印象的な表現があったり、バラバラのピースを読みながら再構成するのはパズルのようでもあり、面白いと思える時もあるのだけれど、やはり読みにくい。芸の世界は面倒くさいところだというのが一番の印象かもしれません。
2014/02/06
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