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そして、バトンは渡された

そして、バトンは渡された

そして、バトンは渡された

作家
瀬尾まいこ
出版社
文藝春秋
発売日
2018-02-22
ISBN
9784163907956
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「そして、バトンは渡された」のおすすめレビュー

【本屋大賞2019!】17年間で4回名字が変わった。でも、いつも愛されていた『そして、バトンは渡された』

『そして、バトンは渡された』(瀬尾まいこ/文藝春秋)

「血は水よりも濃い」ということわざがある。血の繋がった血縁者の絆は、どんなに深い他人との関係よりも深く強いものである、という意味だ。けれど、本当にそう言い切れるだろうか?

 柔らかく優しい世界観が特徴的な瀬尾まいこさんの小説。最新作、『そして、バトンは渡された』(瀬尾まいこ/文藝春秋)を読むと、血の繋がりよりも大切なものがあるのではないかという気持ちにさせられる。

 主人公の森宮優子は、血の繋がらない親の間をリレーされ、17年間で4回も名字が変わった。父親は3人、母親は2人いる。これだけを聞くと誰もが複雑な生い立ちを想像し、同情の目を向けるが、当の本人は「全然不幸ではないから、それが逆に申し訳ない」と言う。彼女がそう思えるのは、どの親にも愛されていたからだ。

 例えば、優子が何度もリレーされるきっかけとなる、実の父親・水戸の再婚相手となった梨花さん。水戸と梨花さんは数年で別れるが、ブラジルに赴任することになった水戸の代わりに彼女が優子を引きとることになる。魅力的で行動的な梨花さんは結婚と離婚を繰り返…

2018/4/14

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【本屋大賞2019!】親の離婚、同居人も名字も何度も変わった……なのに不幸じゃない。読むだけで穏やかになれる『そして、バトンは渡された』

『そして、バトンは渡された』(瀬尾まいこ/文藝春秋)

 結婚式の際、教会の聖堂で花嫁とその父親が腕を組んで中央の道を歩き、正面に待つ花婿に彼女を託す――いわゆる「ヴァージンロード」歩行。これをすると父親は、花婿に娘を託してようやく自分の役目を終えたような気持ちになり、心底ほっとするとともにこの上ない寂しさを感じるのだそうだ。でも『そして、バトンは渡された』(文藝春秋)の主人公の場合、父親役を誰がやるのだろうか?

 作者の瀬尾まいこさんは、2001年、『卵の緒』で坊っちゃん文学賞大賞を受賞し、翌年に作家デビュー。2005年には『幸福な食卓』で吉川英治文学新人賞、2009年には『戸村飯店 青春100連発』で坪田譲治文学賞を受賞。ほかにも、『図書館の神様』『君が夏を走らせる』など多数の作品を生み出している、気鋭の作家である。

『そして、バトンは渡された』の主人公は「森宮優子」。生みの母親は事故で亡くなり、その後は育ての親が結婚と離婚を繰り返し、同居する人も、名字もかわった。「水戸優子」→「田中優子」→「泉ヶ原優子」→「森宮優子」である。物語のはじめでは、1…

2018/3/24

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2021/9/11

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そして、バトンは渡された / 感想・レビュー

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nanako

読んでいる途中は、フラットな物語の展開に「?」「この先、どうなっていくんだろう…」と思うこともありましたが、後半、どんどん面白くなっていきました。森宮さんのキャラクターが最高で、優子との会話は読んでいて楽しかったです。感動がじわじわくる感じで、特に森宮さんが一人称で語る最後の数ページは本当によかった!登場人物が皆いい人で、主人公のことを考えてバトンを渡していく…。平成最後の日に、素敵な本を読めてよかったです。

2019/04/30

starbro

2019年本屋大賞ノミネート&ブランチBOOK大賞2018ということで、読みました。ノミネート作9/10、瀬尾 まいこ、初読です。本書は、発売されてから1年以上経過しているので、新作ハンターとしては失格です。イレギュラー・ファミリー・コメディとして、佳い作品だと思いますが、大賞を獲る程の勢い&感動はないので、3~5位レベルではないでしょうか?続いてラストのノミネート作『さざなみのよる 』ですが、図書館の予約の関係で本屋大賞発表までには、読めそうにありません。

2019/03/15

ウッディ

3人の父親と2人の母親がいて、4回も苗字が変わった優子。複雑な家庭事情にも関わらず、誰からも愛されて素直に育った優子は、今は少しずれた愛情と親としての責任感を持つ森宮さんとの2人暮らし。2人の会話がほのぼのしていて面白く、料理やスイーツがとても美味しそうだった。瀬尾さん小説に出てくる人は、良い人ばかりで、安心して読めます。クールな向井先生の手紙にあった「あなたみたいに親に沢山の愛情を注がれている人はなかなかいない」という言葉が印象的だった。周囲の人を大切にしたくなる物語だった。とっても面白かったです。

2018/08/18

ヴェネツィア

設定はいたって特異。主人公の優子には3人の父親と2人の母親がいる。もちろん、同時にではなくて、それぞれの時期にそれぞれの事情があってのことなのだが。優子が置かれた状況を客観視してしまうと、これはもう普通には不幸な境遇である。にもかかわらず、優子は常に明るい。無理矢理に健気だというわけでもない。これはもう天性のものか。最後の父親となったのが、森宮さん。これまた世間の常識からは、奇妙な親子のちょっと奇妙な共同生活である。そして物語は同時に優子の成長をもさりげなく描いてゆく。トータルには涼風が吹き抜けるような⇒

2024/01/31

zero1

家族とは何だ?誰かと一緒に食べることか。【正しい家族】は存在する?高3の優子は父三人に母二人という【複雑な家庭環境】で育ち名字も四回変わった。一般的に【親は選べない】が選べる優子にメリットは?男、父、夫に優先順位?この作品については【もし私なら】と考えにくい。何故ならあり得ない設定だから。カットバックは効果的で流石。考えることが多く読み終わるまで時間がかかった。第二章の展開は予想外。19年本屋大賞の話題作だが期待しすぎたのか思ったほど感動しなかった。水戸さんについては疑問あり。名セリフ多数(後述)。

2021/01/21

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