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楽園の真下

楽園の真下

楽園の真下

作家
荻原浩
出版社
文藝春秋
発売日
2019-09-11
ISBN
9784163910895
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「楽園の真下」のおすすめレビュー

絶海の孤島で起こった異変。死を呼ぶのは流人の呪いか、それとも……。荻原浩のダークサイドが炸裂するサスペンス小説

『楽園の真下』(荻原浩/文藝春秋)

 本土から遠く離れた絶海の孤島。飛行場はなく、唯一の交通手段である船は週に一度しか発着しない。だが、だからこそ残った豊かな自然と美しい海が観光客の人気を集める。

 そんな「志手島」が、荻原浩さんの新刊『楽園の真下』(文藝春秋)の舞台だ。

 もちろん架空の島である。であるのだが、「豊富な固有種が外来種によって危機に瀕する自然保護区がある」「昔は流罪の島だった」「今は若者の移住者が多い」などなど、現実のあの島この島を想起させる設定にニヤリとしているうちに、事件は始まる。

 実際にいそうでいない「20センチ近い大カマキリ」を島まで探しに出かける羽目になるのは、フリーライターの藤間だ。かつては将来を嘱望された時期もあったが、今は雑多な単発仕事を請け負って口に糊するだけの冴えない中年男で、近頃ライティングを引き受けた『びっくりな動物大図鑑』にしても図書館で借りた本とネットの情報だけで書きあげるつもりだった。

 だが、編集者が何気なく発した「志手島」の一言が、藤間の心を揺すぶった。

 藤間は、以前から目をつけていたのだ。カマキリに、…

2019/9/28

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楽園の真下 / 感想・レビュー

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しんたろー

南海の孤島で自殺者が多発する謎にフリーライター・藤間と島の研究所所長・秋村が巻き込まれるサスペンス…序盤は荻原節であるユーモアを交えて飄々と進むが、途中から不穏な雰囲気と巨大化した奴らにゾクゾクして、終盤は手に汗握るパニックホラーのようで一気読みの面白さ!…藤間と秋村が近親者の死を引きずっている設定をもっと掘って、心情描写を書き足せていれば更なる傑作になったと思うが、エンタメと割り切って読めば文句なしにハラハラドキドキできる。荻原さんの新境地と言える快作だが、気の弱い人は要注意の怪作とも言える(笑)。

2020/02/17

いつでも母さん

もう・・ね、巨大カマキリの迫る音に恐怖でした。寄生虫には私の全身がモゾモゾしてとても気持ちが悪い。なのに途中で止められず最後まで(ちょっと斜め読みの部分あり・・汗)一気でした。昆虫、寄生虫関係のお好きな方もいますね。私は再読はありません(断言!)夜のカマキリとの闘いは凄かった。しかし、何処かに潜んでいる様な気にさせられる終わり方が不安を駆り立てる。キャー!カバーのタイトルの下にいた!今夜は眠れるでしょうか?

2019/10/19

utinopoti27

本作は、本土から遠く離れた小島を舞台に、巨大化したカマキリの恐怖を描くパニックサスペンスだ。さらに、宿主の意思を操り、自殺衝動を引き起こす不気味な寄生虫も生息しているらしい。食物連鎖の頂点に君臨し、安心しきった「ヒト」の楽園の真下で、虎視眈々と息を潜めるモンスターたち・・。このB級ホラーチックな設定を、おぞましくも臨場感溢れるタッチで一気に読ませる筆力は、さすが直木賞作家といったところか。とりわけ虫好きにはたまらない作品だろう。もしも次回があるならば、あの『G』をぜひ巨大化させてほしいものだ。

2020/02/25

のぶ

日本でいちばん天国に近い島といわれる志手島は、本土からは1日近くかかる。亜熱帯の緑深い森に包まれている。島で17センチの巨大カマキリが発見された。一方、2年間で12人が、自殺と思しき水死体で発見されており、自殺の新名所と称されていた。前半部はカマキリやハリガネムシの描写が詳しく描かれるが、後半はカマキリが人間を襲うパニックホラーに変貌する。恐ろしい世界ではあるが、荻原さんの文章はユーモアを含んだ部分もあり、コミカルにも感じる。面白かったが、人間のドラマと、自殺の真相が薄めなのがややマイナス点。

2019/10/04

修一郎

荻原浩さんの趣味は家庭菜園で,野菜作りの合間に見かける虫を見ているうちにこんなお話を思いついたのだそうだ。ハリガネムシに寄生されたカマドウマが渓流魚の生態系維持に決定的な貢献をしているという最近の知見に驚いたばかり,実にタイムリーだった。巨大カマキリに加えてロイコクロリディウムにギニア虫…たくさん出てくる寄生虫のお話は蘊蓄満載で滅法面白い。最後のアクションシーンは,ジュラシックパーク「ティラノザウルス」のカマキリ版だ。臨場感たっぷりで面白かった!寄生虫ハリガネムシから膨らませた想像力に脱帽デス。

2019/10/22

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