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Iの悲劇

Iの悲劇

Iの悲劇

作家
米澤穂信
出版社
文藝春秋
発売日
2019-09-26
ISBN
9784163910963
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「Iの悲劇」のおすすめレビュー

一度死んだ村に「Iターン」を促せ! 米澤穂信の描くビターな社会派ミステリー『Iの悲劇』

『Iの悲劇』(米澤穂信/文藝春秋)

 木々が大地に根を張るのに長い年月が必要であるように、人を全く新しい環境に住まわせるのは決して簡単なことではない。高齢化が進むあらゆる街で、地方への移住を支援する動きがあるが、移住者たちを街へと根づかせるには、あらゆる困難がつきまとうだろう。自然豊かな光景に心惹かれて移住を決意したとしても、観光で訪れるのと、実際に住むのとでは雲泥の差がある。生活してみてはじめて、都会とは異なる田舎での不便さに気づくという場合も少なくはない。地方への移住は、各自治体の支援とサポートがあってこそ、成り立つものなのかもしれない。

 米澤穂信氏の『Iの悲劇』(文藝春秋)は、限界集落を抱える地方と、移住者をとりまく現実を描いた社会派ミステリー。米澤穂信氏といえば、『氷菓』をはじめとする「古典部」シリーズや『本と鍵の季節』などの著者であり、「人の死なないミステリー」を描く作家として知られる。本作も、刑事も探偵も出てこない「人の死なないミステリー」。だが、先の読めない事件の数々と、ビターな読後感がクセになる1冊だ。

 舞台は、山あいの小さな集落…

2019/10/12

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Iの悲劇 / 感想・レビュー

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bunmei

穏やかな山村を舞台に、いつもの米澤ミステリーの要素はやや控えめの連作。過疎化の村にIターン族の誘致を始めた南はかま市。甦り課と称した課で村の活性化に奮闘する市役所職員とIターン族との話。山村生活に憧れを抱いて移住してきた人々。しかし、そこに思いもよらない問題や事件が次から次へと勃発。それらの解決に当たるのが甦り課職員の誠実な万願寺、ずぼらな観山、仕事は部下任せの西野課長の3人。この凸凹トリオとIターン族とのやりとりの中で、最後は米澤さんらしいまとめ方。全体の奉仕者としての公務員の悲哀も感じました。

2019/11/14

ウッディ

無人になった蓑石集落に移住者を募る再生プロジェクトを担う「甦り課」で、無気力な課長と新人の中で孤軍奮闘する万願寺。移住者が巻き起こす数々の問題や謎を解決するが、村を去る者を引き留められない。プロジェクトの成否は?こんなにも癖が強い人ばかりが集まり、次々と問題が起こる謎は、最終章で明らかになり、米澤さんらしい一冊でした。ただ、自然豊かな地で新たな生活を夢見て移住した人が村を去っていく物語は、謎解きのすっきり感を上回る寂しさを感じるともに、限界集落が再生することはないのかという無力感に気分が滅入りました。

2020/03/09

うっちー

ミステリー、お仕事、社会問題が詰まった小説でした

2019/12/31

OSOGON15

滅びた集落に住民を外部から招くIターン計画に奔走する、甦り課。謎が起こり続ける連作ミステリー。移住してきた人々へ降りかかるトラブルを解決するために主人公・万願寺を始めとする観山、西野課長は奮戦(この二人は?)するも空しく、次々と住民は退去していくが・・そして全てに繋がっていたものは・・作者さんが硬い、難しいイメージだったのでどうかな?と思って読みましたが普通に面白かったです。Iの喜劇ですか?

2023/05/27

ひでちん

人口6万程の合併市:南はかま市。役所内『甦り課』は、6年前最後の住人が転居以降廃村状態の簑石集落に市長肝入りのIターン(都会からの移住者)計画を進行する課。 課員の努力で様々な移住者が来る中、色々な事件やトラブルが発生するミステリーで全7章の連作短編集。 当初は語り部の万願寺君が事件解決をして行くのかと思いきや、まさかの普段全くやる気の無い西野課長が実質上の探偵役で、第1章終盤腰が抜けかけた(笑) どの事案も後味が悪くほろ苦い上、終章まさかのどんでん返しもあり、如何にも米澤流で滅茶滅茶面白かった!!!

2023/04/04

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