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少年と犬

少年と犬

少年と犬

作家
馳星周
出版社
文藝春秋
発売日
2020-05-15
ISBN
9784163912042
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「少年と犬」のおすすめレビュー

【直木賞受賞『少年と犬』】何かを求めて日本を縦断する一匹の犬…犬を愛する人に捧げたい感涙作

『少年と犬』(馳星周/文藝春秋)

「人という愚かな種のために、神が遣わした贈り物」。まさに、犬とはそういう存在だ。従順で賢く、どんな人の心にも寄り添う。そんな温かな存在に、どれだけ多くの人が救われていることか。

 第163回直木賞候補作、馳星周氏の『少年と犬』(文藝春秋)は、犬を愛するすべての人に捧げたい感涙作。馳星周氏といえば、ノワール小説の旗手として知られるが、犬のために東京から軽井沢へ引っ越してしまうほどの愛犬家としても知られている。そんな馳氏が描いた作品だからこそ、この作品には犬の魅力がギュッと詰め込まれているのだ。犬は、どうしてこんなにも清らかな心をもっているのだろう。どうしてこんなにも人間のために尽くそうとしてくれるのだろう。この本を読むと、犬の賢さと気高さに、改めて心を奪われてしまう。

 物語の始まりは、2011年秋、仙台。震災で職を失った中垣和正は、若年性認知症の母とその母を介護する姉の生活を支えようと、犯罪まがいの仕事をしていた。そんなある日、和正は、コンビニエンスストアの駐車場で、ガリガリに痩せた野良犬と出会う。シェパードに和犬の血…

2020/7/15

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【全作品紹介】太宰治の孫・石原燃のデビュー作も候補に! 第163回芥川賞・直木賞ノミネート

 日本文学振興会が主催する「第163回芥川賞・直木賞」のノミネート作品が、2020年6月16日(火)に発表された。この記事ではそれぞれの候補作について、読者からの反響を交えながらご紹介。「どんな作品があるのか気になる!」という人は、ぜひ参考にしてみてほしい。《紹介順はそれぞれ著者名五十音順》

芥川賞候補(1) 石原燃『赤い砂を蹴る』(『文學界』6月号)

『赤い砂を蹴る』(石原燃/文藝春秋)  今回の候補作のうち、最も話題を呼んでいる作品のひとつ。作者は純文学作家・津島佑子の娘であり、太宰治の孫である石原燃。デビュー作となる『赤い砂を蹴る』では、ブラジルを舞台として母娘の“たましいの邂逅”を描いている。

 読者の共感を誘うストーリーテリングが評判を呼んでいるようで、ネット上では「読み始めたら止まらなかった。一人の娘である自分と重ねて読んだ。だからこそ、ブラジルの大地が人生を肯定してくれるようで救われた」「素晴らしく読みごたえのある小説。子育てに纏わる諸課題に、女性が否応なしに直面させられるロールモデル。最後に描かれる、母と娘による魂の邂逅が愛おしい」とい…

2020/6/18

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「少年と犬」の関連記事

第163回芥川賞は高山羽根子『首里の馬』と遠野遥『破局』に、直木賞は馳星周『少年と犬』に決定!

 第163回芥川賞・直木賞(日本文学振興会主催)が発表された。選考会は7月15日(水)、東京・築地の新喜楽で開かれ、「芥川龍之介賞」は高山羽根子の『首里の馬』と遠野遥の『破局』に、「直木三十五賞」は馳星周の『少年と犬』に決定した。

【第163回芥川賞受賞作品】

『首里の馬』(高山羽根子/新潮社)

【あらすじ】 この島のできる限りの情報が、いつか全世界の真実と接続するように。沖縄の古びた郷土資料館に眠る数多の記録。中学生の頃から資料の整理を手伝っている未名子は、世界の果ての遠く隔たった場所にいるひとたちにオンライン通話でクイズを出題するオペレーターの仕事をしていた。ある台風の夜、幻の宮古馬が庭に迷いこんできて……。 世界が変貌し続ける今、しずかな祈りが切実に胸にせまる感動作。

【プロフィール】 高山羽根子(たかやま はねこ)●1975年生まれ。多摩美術大学美術学部絵画学科卒。2010年「うどん キツネつきの」が第1回創元SF短編賞の佳作に選出される。同年、同作を収録したアンソロジー『原色の想像力』(創元SF文庫)でデビュー。16年「太陽の側の島」で第2回…

2020/7/15

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少年と犬 / 感想・レビュー

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ヴェネツィア

表題作を含む6つの連作短篇集ーというよりは巻末の「少年と犬」に向かって只管に疾走してゆく物語。巻頭の「男と犬」は続く「泥棒と犬」を呼び覚まし、それがまた次の…と連鎖を繰り返しつつ、最後に円環を結ぶという構造。そのいずれの物語も「死」が新たなる生を生み出すという「死と再生」の物語でもある。本書がそうした構造をとるのは、これが馳星周の3.11大震災への鎮魂歌でもあるからだろう。そして、その鎮魂は物語末尾のカタルシスによって浄化が果たされたようである。私たち読者が多聞に寄せる共感と感謝の涙とともに。

2022/11/01

starbro

馳 星周は、新作をコンスタントに読んでいる作家です。愛犬家の著者の犬本、3作目だWAN。釜石(東日本大震災)~熊本(熊本地震)ドッグ・ロード・ノベル、奇跡の物語、感涙作でした🐕🐕🐕 https://books.bunshun.jp/articles/-/5521

2020/06/13

鉄之助

感動もの、とわかっていても、ラスト7ページは涙が止まらなかった。犬の名前「多門」には、深~い意味がありそうだ。仏教の多聞天は、四天王のひとつで「よく聞く所の者」。だから、連作短編集の6人、それぞれの主人公の苦しみに耳をじっと傾け、護ってくれる。各章で登場するときは、いつも「傷つき、くたびれ、飢えている」多門だが、みんなの心を温める。各章、辛い幕切れなのは、そうでもしないと、多門が次の旅に出られないからか? 超愛犬家の馳星周、ならではの良くできた物語だった。面白過ぎて、読む手が止まらずあっという間に読了。

2020/12/07

ウッディ

震災で飼い主が亡くなり、何かを求めて旅する犬・多聞。その途中で出会った人たちは、利口な多聞と心を通わせ、温かな気持ちになるが・・。男、泥棒、夫婦、娼婦そして老人、犬と出会った人たちはいずれも悲劇的な結末を迎えるが、彼らにとって、犬との出会いが不幸だったのか、それとも不幸の前のささやかな癒しと捉えるのか、自分の中での収まりが悪かった。犬とともに幸せに過ごした過去は、不幸な現実を忘れさせてくれる優しい記憶なのかもしれない。特に、「男と犬」で、多聞を見た認知症の母がほほ笑むシーンは、切なく胸に刻まれた。

2021/04/23

bunmei

直木賞受賞に相応しい、ハートフルな連作小説。主人公となる犬・多聞が、東北から九州まで放浪する中で、様々な境遇の人々と関わり、その人々の心の隙間を埋めていく。それらの出会いは、全てが偶然でありながら、必然でもあるように…。当然、犬の多聞は、何も語らない。しかし、それぞれのシチュエーションの中で、多聞は確かに、人々を勇気づけ、励まし、寄り添う言葉を語っている。そして、最終章の少年との出会いこそが、多聞の使命だったかのように、それまでのストーリーを回収し、目頭が熱くになるフィナーレへと、読む者をいざないます。

2020/08/14

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