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汚れた手をそこで拭かない

汚れた手をそこで拭かない

汚れた手をそこで拭かない

作家
芦沢央
出版社
文藝春秋
発売日
2020-09-26
ISBN
9784163912608
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「汚れた手をそこで拭かない」のおすすめレビュー

平穏な日常が一瞬で崩れ去る恐怖がリアルに迫る…! ミステリの名手、芦沢央の最新短編『汚れた手をそこで拭かない』

『汚れた手をそこで拭かない』(芦沢央/文藝春秋)

 よく知りあいに「ミステリって興味はあるけど、どれから読んでいいのか分からない」と聞かれる。そんな時は何人かお薦めの小説家の名前を挙げるのだが、芦沢央氏も必ずその中に含まれる。山本周五郎賞に2度、日本推理作家協会賞で3度受賞候補になっている芦沢氏。リーダビリティーが高いこともあり、ミステリでありながらエンタテインメントとしても一級品の小説を書く。そんな作家はそうそういないだろう。

 その芦沢氏は、8月19日に『僕の神さま』(KADOKAWA)を刊行したばかりだが、矢継ぎ早に新刊を発売。9月26日に、日本推理作家協会賞候補作の2作を含む5編からなる独立短編集『汚れた手をそこで拭かない』(文藝春秋)を上梓した。旺盛な創作意欲のたまものだろう、実際、その筆致は冴えに冴えている。まず目を惹かれるのが表紙。芦沢氏の作品には常に不穏な空気が流れており、この表紙だけで作品のトーンが伝わってくる。

 平穏な日常のふとした瞬間に一旦躓くと、階段から転げ落ちるような悲劇が起きる。芦沢氏の作品はそうした類の作品が多く、本作で…

2020/10/17

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第164回芥川賞は宇佐見りん『推し、燃ゆ』、直木賞は西條奈加『心淋し川』に決定!

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【第164回芥川賞受賞作品】

『推し、燃ゆ』(宇佐見りん/河出書房新社)

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【第164回直木賞受賞作…

2021/1/20

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 日本文学振興会が主催する「第164回芥川賞・直木賞」のノミネート作品が、2020年12月18日(火)に発表された。それぞれの候補作を一挙紹介。「どんな作品があるのか気になる!」という人は、ぜひ参考にしてみてほしい。各賞の発表はきたる2021年1月20日(水)に行われる予定。《紹介順はそれぞれ著者名五十音順》

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2020/12/18

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汚れた手をそこで拭かない / 感想・レビュー

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starbro

第164回直木賞にノミネートされてから図書館に予約したので、漸く読めました。(既読6/6コンプリート)芦沢 央、2作目です。本書は、イヤミス短編集、オススメは、『忘却』&『お蔵入り』です。直木賞ノミネートも納得ですが、次は長編で直木賞を受賞して欲しいと思います。本書で区切りの3,500レビュー達成しました。 https://books.bunshun.jp/articles/-/6032?ud_book

2021/06/04

bunmei

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ウッディ

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2020/10/25

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