本心
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平野啓一郎『本心』ロングインタビュー!「強調したかったのは、愛する人が他者であるということはどういうことなのかというテーマです」
※この記事は『ダ・ヴィンチ』7月号「ノベルダ・ヴィンチ」に掲載された「平野啓一郎『本心』インタビュー」のWEBノーカットバージョンです
平野啓一郎は分人主義という独自の思想に基づき、「私」の根拠について思考=試行する物語を書き継いできた。20年後の日本を舞台に展開する『本心』は、貧困、格差、「自由死」など二十一世紀的問題群が外挿化された小説である。平野文学の到達点がここにある。
(取材・文=榎本正樹 写真=川口宗道)
初期三部作、実験的な短編群、そして分人主義の提唱へ
平野啓一郎は「作風」を重視する作家である。それは自身の作品世界を4つの時期に分け、それぞれの時期で異なる作風の作品をリリースする姿勢からも明らかだ。第1期は『日蝕』(1998年)、『一月物語』(99年)、『葬送』(2002年)のロマン主義三部作。短編小説や実験小説群を特徴とする、『高瀬川』(03年)から『あなたが、いなかった、あなた』(07年)に到る第2期。前期分人主義を唱えた第3期は『決壊』(08年)、『ドーン』(09年)、『かたちだけの愛』(10年)、『空白を満たしなさい』(12年…
2021/6/15
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本心 / 感想・レビュー
starbro
平野 啓一郎は、新作中心に読んでいる作家です。本作は、カズオ イシグロにインスパイアされたのでしょうか、近未来ママっこ男子VF譚でした。肉親であっても本心は、誰も解らないし、本人でさえも自分の本心を解らないかも知れません。 https://k-hirano.com/honshin
2021/06/15
ウッディ
平野さんらしい簡潔で美しい文章で紡がれた近未来の物語は、日本の明日を考えさせるとともに、読書の楽しさを教えてくれたような気がする。VR技術、自由に死ぬ権利、格差社会など、難しいテーマを扱いながらも、シンデレラストーリーのような物語としての面白さもあった。底辺を生きる朔也や三好のこちら側と富める者達のあちら側について、悔しいけれど、いつかあちら側に行けるかもしれないという希望を持てるから、なくならないでほしいと呟く三好の言葉が印象的だった。久々に出会えてよかったと思える一冊でした。
2021/11/28
まちゃ
「自由死」が合法化された近未来の日本。石川朔也は、母の死後に孤独と喪失感から立ち直れず、AIで再現された生前そっくりの母を再生させて「自由死」を望んだ母の本心を探ろうとする。母の友人・三好彩花、かつて交際関係にあった老作家・藤原亮司が語る知らなかった母の一面。アバター・デザイナー、イフィーとの出会い。それらを通じて、朔也は悲しみから立ち直っていく。朔也の内省が多く、共感出来るところ、出来ないところありましたが、それでも親子、命、格差や人とのつながりを考えさせる興味深い物語でした。
2021/06/26
のぶ
新聞連載時から気になっていた作品。読んでみて流石、平野さんだなと感じさせられた。「自由死」が合法化された近未来の日本が舞台で、母親を失った石川朔也を中心に物語は展開する。朔也自身、母のバーチャルフィギアを作成し、人工知能が再現する母と触れ合いながら、自由死を望んだ母の、本心を探ろうとする。いろんな人物との接触でまったく知らなかった母のもう一つの顔が浮かび上がって来る。設定はSFだがこの話を納得させるには、この状況が必要なのがよく分かる。ただ“本心”が本当に理解できたかは難しい手強さもあった。
2021/06/07
のり
近未来の日本は人口減少・格差社会が顕著になる中、自由死が合法化されていた。それを望んでいた母親が突然事故で亡くなり、最新技術で母親のVF(ヴァーチャルフィギュア)を作成依頼し、喪失感の穴埋めと自由死を望んだ本心を探ろうとするが…もう十分という言葉の重み。生きる価値と残された者への想い。生前の知り合いに聞き込みながら、己の誕生の原点も探る。技術力は凄いが、もっと希望のもてる未来だけあって欲しい。
2021/12/25
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