星のように離れて雨のように散った
「星のように離れて雨のように散った」の関連記事
「罪悪感から救われる人たちを描きたいという意識が強かった」『星のように離れて雨のように散った』島本理生インタビュー
〈あなたが、わたしを愛してるって、どういうこと?〉と、社会人の恋人・亜紀にプロポーズされた春は、そう問い返す。幼いころ、一通の手紙を残して失踪した父と、父の信じていた“神さま”にまつわる記憶は、彼女に“愛すること”と“信じること”を不確かにさせていた――。
(取材・文=立花もも 撮影=冨永智子)
「最初に浮かんだのは、亜紀くんがプロポーズした温泉宿のテラスに立つ二人の姿でした。土砂降りの雨のなか、世界から切り離されたように二人だけが静かにたたずんでいる。幸せなんだか孤独なんだかわからないけれど、不思議な明るさの漂う情景……。そのときはまだ春がどんな子かもわからなかったけれど、一度ちゃんと読み解いてみたいと思っていた『銀河鉄道の夜』や、幼いころに失踪した私自身の父への想い、キリスト教の罪の概念と愛の関わりに感じていた恋愛小説との近似性、といった潜在意識にあったものたちが少しずつ浮かびあがり、ひとつの物語へと繋がっていきました」 日本文学科の大学院修了を控える春は、『銀河鉄道の夜』を修士論文のテーマに選ぶ。熱心な法華経信者として知られる彼が、キリ…
2021/9/10
全文を読む関連記事をもっと見る
星のように離れて雨のように散った / 感想・レビュー
starbro
島本 理生は、新作をコンスタントに読んでいる作家です。本作は、宮沢賢治『銀河鉄道の夜』オマージュ、春夏秋恋愛譚でした。星のように離れて、雨のように散ったのかなぁ? https://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784163914015
2021/09/05
のぶ
主人公は日本文学科大学院の原春。卒業を前に修士論文のテーマに悩んでいた。創作小説による修士論文と、宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」を扱った副論文を合わせて提出する事を考えていた。そして春は幼い頃に父が失踪していた。この失踪と未完の小説、それに「銀河鉄道の夜」が絡み合って物語は進行する。嫌な人は出てこない。恋人の亜紀やゼミ仲間の篠田と売野らが春を支えてくれる。話の根幹に失踪した父の存在が影を落としていて、それが春の現在の立ち位置を浮き彫りにしていた。読むほどに深いものが湧いてくるような作品だった。
2021/08/09
美紀ちゃん
優しい話だった。 春と亜紀くん。 売野さんの存在がいい感じ。モヤモヤなことをなんでも相談できる相手は重要。 吉沢さんも。適切な距離をとって対話の中に明るいものを見つけてくれた。亜紀くんともこんなふうに、互いの中の優しく光る星を見つけるようなやり方をしたかったと気づく。 自分のことを客観的に話す事ができるようになった時に、「その話こそ物語と呼ぶべきもの」と吉沢さんに祝福される。 救済とは、理解のこと。
2021/08/17
まちゃ
来春に就職を控えた女子大学院生・原春。行方不明になった父、子供の頃に渡したぬいぐるみを返せと要求する叔母、敬語を使う母との関係、家族に恵まれなかったことで孤独を抱えた春が、恋人の亜紀や大切な人たちと過ごした2020年夏の魂の彷徨の物語。揺れるような流れるような柔らかい文体と、共感を誘うハッとするセリフが印象に残りました。島本さんの「あとがき」も興味深いものでした。
2021/09/18
おしゃべりメガネ
島本さんらしいといえばらしい作品ですが、正直今作は最初から最後まで、イマイチハマれなかったです。とにかく私には主人公「春」がめんどくさいキャラなのと、彼氏は彼氏で鬱陶しいキャラに感じ、なんとか最後まで読みきったものの、何のことやらサッパリになってしまいました。やはり昨今のコロナ禍において、作品にも少なからず影響するのかなと思わなくない内容、雰囲気でした。よく言えば他の作品よりは当たりの柔らかく感じる作品でしたが、島本さんの作品に個人的には柔らかさは求めないので、やっぱり読了後は正直残念なキモチでした。
2021/08/20
感想・レビューをもっと見る