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赫衣の闇

赫衣の闇

赫衣の闇

作家
三津田信三
出版社
文藝春秋
発売日
2021-12-09
ISBN
9784163914763
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赫衣の闇 / 感想・レビュー

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のぶ

「黒面の狐」「白魔の塔」に次ぐ、物理波矢多(もとろいはやた)シリーズの3作目。二つの事件を解決した後、波矢多は上京し、かつて寝食を共にした熊井新市の元に身を寄せる。新市の父、潮五郎は闇市を仕切る的屋の親分だった。波矢多は潮五郎の弟分の私市吉之助から、私市が取り仕切る闇市に現れる、赫衣の正体を暴いてほしいと依頼を受ける。そこは赤迷路と呼ばれる場所だった。前半部は戦後の混乱期の雰囲気を詳細に描いていて、闇市についての知識も得る事ができた。殺人事件の起こるのは中間部を過ぎたあたり。最後は鮮やかに決めました。

2021/12/28

sin

昭和の一時期、中村草田男が詠んだ「降る雪や 明治は遠くなりにけり」は、今では昭和に置き換えて平成と云う時代を挟んで遠くかすみゆくように想えてならない。作品で語られる敗戦直後のヤミ市や街娼の有り様は自分たち“戦争を知らない子供たち”にとっても身近にその痕跡を感じとれたものだったが、今となってはその戦争の悲惨さを実感することは難しいに違いないだろう。戦後、国から突き放された国民や特に女子供たちの窮状を乗り越えてこの国が復興したことを自分たちは忘れてはならないと感じさせられた。

2022/01/02

えみ

憂鬱を纏った戦後日本を背景に隠された闇、隠し切れなかった貌が残忍酷薄の事件を呼んだ。不気味な噂と人々を恐怖に陥れる怪異、人智の及ぶところではない領域に一人の探偵が挑む。物理波矢多が活躍するこのシリーズは、他の探偵ものでは感じる事の出来ないジットリした薄気味悪さが事件に絡みついて、読む度に暗い悦びが心を満たす私のお気に入り。敗戦国日本が色濃く残る時代とその時代だからこその人々の心情が相まって生まれてくる魑魅魍魎。今回は女性たちを恐怖に陥れる「赫衣」の正体を追う。何もない時代、だからこそ何でも起こり得る怖さ。

2022/01/18

HANA

物理波矢多シリーズ最新作。戦後の混乱期、舞台は迷路のように入り組んだ闇市。そこに出現する赤い衣の怪人。という事で舞台は東京。以前のような地方の土俗に根差したような怪異が起こるわけではないが、その分戦後の混沌というか何でもありな状態が直接伝わってくる。著者が自家薬籠中とする追われる描写や、謎めいた怪人、密室となった状況等魅力的な謎も十分。ただミステリとして読んだ場合、ラストはえ?これで終わり?と喰い足りない感じを受ける。衆人環視化の密室というトリックもある程度予想がついたし。最後が残念と言えば残念かな。

2022/01/04

オーウェン

話の時系列的には1作目の「黒面の狐」のあと。戦後間もない闇市で仕事を探すも、旧友の新市から奇妙な依頼を受ける。それは町に現れる赤い衣を着た人間の解明。戦後ということで、闇市を含めた蘊蓄描写が中盤までかなりの量で見れる。そして後半遂に殺人が起き、さらには赫衣の人間が姿を見せる。殺人には密室が成立しており、赫衣の人間には逃走の経緯が封じられている。一応答えのようなものが出るが、なんとなくモヤモヤする出来。それよりも作品の垣根を越えて波矢多に助言する人物。今後クロスオーバーはあるのだろうか、そちらの方が気になる

2022/04/29

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