新装版 武田信玄 火の巻 (文春文庫) (文春文庫 に 1-32)
新装版 武田信玄 火の巻 (文春文庫) (文春文庫 に 1-32) / 感想・レビュー
W-G
火の巻と銘打たれてはいるが、火花バチバチの激闘編ではなく、武田家の未来を匂わせる描写や、深みのある台詞など、どちらかというと地味なのに、噛むほどに味が出るタイプのスルメ巻。信玄の老いや病、上洛への焦燥がいよいよ色濃く、最終巻が気になるところ。先に『武田勝頼』を読んだ身としては、穴山信君の登場場面に注目してしまうし、勝頼の勇ましさが哀しい。戦シーンが少ないわけではなく、むしろずっと戦が続くのに、そこを主眼とせずにまとめた著者の構成力がすごい。義信逆心→三条の方の死で、先の二巻での印象が変化するところも好き。
2018/10/13
s-kozy
川中島の戦いを制し、天下人へと近づいたかに見える信玄。しかし、地理的には不利な位置にいたのかな。上洛は信長が先んじる。後継にも問題が。義信とはうまくいかず、勝頼が後を継ぐことに。関東の北条をうまく抑え 、駿河府中城を手に入れた。ついに海のある国に出て、京都への道が見えてきたところで本巻は終わる。大願成就のためには家康の動きや信玄自身の健康状態なども気になるところ。最終巻に続く。
2018/11/30
抹茶モナカ
川中島の合戦以来、仲違いしていた息子の太郎義信の無謀、その戒めとしての幽閉。義信は獄中に病死してしまう。勝頼が世継として見られ出し、様々な戦修行をする。これまでより、作者の想像の範囲が拡がっているような気もして、比較的、読みやすかった。個人的に、歴史小説が苦手なため、相変わらず読むのは大変なんだけどね。
2016/03/26
金吾
◎戦国武将の業の深さを感じる巻です。信玄と義信は前巻から対立していましたが、何故こんなに修復不可能な状態になったのだろうかと思いました。また今川氏の状態は亡国というものを印象づける書きっぷりでした。
2022/06/10
Haru
ついに信長が義昭を奉じて京に上る。長宗我部元親が京に攻め上るのに地理的不利を嘆いたように、信玄公も信長の美濃との地理的差に歯噛みする。甲信の広大な土地を見事に納めながらも、上杉、北条、徳川と障害が多く一進一退で京に上れない様子にこちらも歯がゆくなる。前半の善信事件から一転、後半の勝頼が諏訪の直系として行う諏訪神社支社の采配には胸が熱くなった。また、典厩さん亡き後、度々登場する逍遙軒信廉の戦嫌いの飄々とした人柄もいいし、典厩さんの息子信豊が父そっくりに育って勝頼を補佐しているエピソードも微笑ましい。
2017/02/19
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