KADOKAWA Group

Facebook Twitter LINE はてブ Instagram Pinterest

新装版 父の詫び状 (文春文庫)

新装版 父の詫び状 (文春文庫)

新装版 父の詫び状 (文春文庫)

作家
向田邦子
出版社
文藝春秋
発売日
2005-08-03
ISBN
9784167277215
amazonで購入する

「新装版 父の詫び状 (文春文庫)」のおすすめレビュー

向田邦子を知っていますか? 今読む理由がある、名作3選!

(c)文藝春秋 エネルギッシュに仕事に励み、おしゃれでグルメ、スポーツ万能。両親が結婚しろと言うのもはねつけて、青山に買ったマンションで、愛する猫たちと暮らす──そんな女性がいると言えば、「かっこいい人だね。友達?」という声が聞こえてきそうだ。しかしこの人物は、昭和4年生まれ、存命なら88歳。数々の名作を残した向田邦子の生きざまは、現代を生きる私たちにとっても、憧れや指針となりうる。彼女が売れっ子文筆家として花開くまでを追いながら、向田邦子という人がわかる3冊を紹介したい。

■食いしん坊だった少女時代を懐かしむエッセイ集『父の詫び状』

『父の詫び状』(文藝春秋)

 向田邦子初のエッセイ集『父の詫び状』(文藝春秋)は、読んだことがある人、タイトルを聞いたことがある人も多いだろう。エッセイの傑作と言われる本書は、邦子が「白い木綿糸を通した針で、黒くしめった地面を突くようにして桜の花びらを集め、腕輪や首飾りを作」っていた、少女時代の出来事を描き出す。収められた24篇の中では、タイトルのとおり、父の姿が印象的だ。

「わが家の遠足のお弁当は、海苔巻であった。 …

2018/3/31

全文を読む

おすすめレビューをもっと見る

新装版 父の詫び状 (文春文庫) / 感想・レビュー

powerd by 読書メーター

yoshida

戦前からの昭和の家族を描いたエッセイ集。滋味深い文章。綺麗で趣のある日本語に、過ぎ去った昭和の懐かしい匂いがする。作者が戦前に子供時代を過ごし、当時の昭和の生活が分かり実に新鮮な読書体験となった。頑固な父と、咄嗟の時に動く母の姿も読んでいて好ましい。思うのは人生の不思議な巡り合わせ。作者一家は東京大空襲の被害に遭うが、奇跡的に自宅は焼け残り家族も無事であった。この結果が変われば、例えば両親の庇護が無くなれば困難な戦後を迎えただろう。まさかの日航機事故での急逝も人生の綾かも知れない。素敵なエッセイ集です。

2018/08/18

zero1

私にとって向田の文章は手本。簡素で無駄がない。直木賞作家というより、「ドラマの人」だった彼女のエッセイは情景が目に浮かぶ。頑固な父親の拳骨で育った長女。高松や鹿児島の景色。空襲の後、芋の天ぷらと白飯がごちそう。そして鰻を鮮烈に記憶している。カレーの郷愁と海苔巻の端が好き。黒柳徹子の9分にわたる長編留守電。すべてがドラマ的。不吉なのが澤地久枝とアマゾン旅行。飛行機が墜落したらダイヤの指輪を物々交換して生き延びるという話。後に向田は台湾での航空機事故で亡くなっている。失って初めて文化的損失が分かる。

2018/12/23

あんこ

飾らない文章で綴られる向田邦子さんのエッセイ。読んでいると、何故だか思いも寄らぬところからわたし自身の思い出も呼び起こされて、共感とは別の感覚がはたらき少し涙ぐんでしまう場面がいくつかあった。向田さんの過ごした幼少期の時代のことをわたしは知らないけど、鮮明な視覚的表現によって、想像できてしまう。その人の表情までも見せられました。魅力的な人間くささに満ちたエッセイです。

2014/09/02

masa@レビューお休み中

子どもの頃は存在も知らないまま、なぜか亡くなったときの報道だけ覚えている。そんな向田さんの作品に去年から触れるようになった。気づくと小説だけではなく、インタビュー集や、このエッセイ集まで手にしていた。もちろんどの話も秀逸で面白いのだが、どこかフィクションとは異なる寂しさの余韻が付きまとうような気がした。隣人や友人家族の死、父や家族との思い出、子どもの頃に食べた美味しいもの。寂しさというのは後悔から生まれるのかもしれない。できなかったことを思い返す、亡き人を思い出す。残されたものの宿命なのかもしれないが…。

2017/04/20

rico

戦前の中流家庭のくらし。家族。仕事。都会の風景。病を得て死を意識し遺言状のつもりで書いたというこのエッセイは、向田さんの人生が詰まってる。脚本家として具体的な言葉と動きと物で世界を構築してきたからか、多分向田さんのお人柄か、無駄がなくすっきりしてて、かつその情景が見え、空気を感じ、音が聞こえるような文章。読みやすいのになかなか読み進められなかったのは、多分1つ1つの章がとても密度が濃くて、それがそのままドラマになりそうな完成度だから。大切に、大切に、繰り返し読みたい。飛行機の話は何かもう・・・。

2019/11/18

感想・レビューをもっと見る