妖櫻記 下 (文春文庫 み 13-4)
妖櫻記 下 (文春文庫 み 13-4) / 感想・レビュー
mii22.
応仁の乱がおこる前の混沌とした室町時代を背景に、山東京伝の読本「桜姫全伝曙草紙」に登場する人物たちを皆川流のキャラクターとしてアレンジし縦横無尽に物語のなかで活躍させる技は鮮やか。中でも野分の造形は「怨霊の祟りなど、死者が生者に勝てるものか」とはね除ける激しさで、凄まじい誘引力を持ち読者を魅了する。血生臭い争いを繰り返す物語なのに、ラストの清々しさといったら..もう圧巻。
2017/04/06
冬見
上巻であー桜姫の話かと思ったら、ぼんやり認識していた桜姫の物語とはどうやら違うようで俄然面白くなってきた。こういう書き換えは江戸戯作でもよく見られるやり方で、桜姫の物語を山東京山が書き換えたように山東京山の桜姫の物語を皆川博子が書き換えるっていう構図がおもしろい。物語の随所で作者が顔を出してメタ発言をしたり、蘊蓄を語ったり、謎の脱線をしてみせたりするところなんてまんま戯作じゃない! 粋だなあ。そのあたりがめちゃくちゃ楽しくてにやにやしてしまった。史実の世界とフィクションの世界が溶け合うような幕切れも好き。
2019/02/15
橘
下巻もとても面白く、濃密な読書でした。登場人物たちもそれぞれ個性的で魅力的で、好きでした。終わり方もほの明るくて良かったです。
2015/09/10
桐ヶ谷忍
大体2人の主人公を軸に物語が進むのだけど、なんだか「この話の続きはどうなるのか」という興味がまるで沸いてこなくて、読むのに随分時間がかかってしまった。帯を見たら「復刊本」とのことで、コアなファン用のための本なのかなと思った。下巻もあるけれど、食指が動かない…。
2018/05/31
しゅえ
欲望と腐敗にまみれ、血も臓物も飛び散る話なのに、何故か清々しい読後感。誰もが皆、己の人生をがむしゃらに生きているのだ。個人的には兵藤太が好きだった。男前なのに色に正直で、口下手、しかし主の命は絶対に遂行する。あんな男に忠節を尽くされてみたい。ラストシーンがまた印象的で、河原を歩き行く彼らの背中が残像のように脳裏に焼き付いた。そして、今回も時折挟まれる作者のメタ発言。「思いどおりに動いてくれない」だの「阿麻丸が美男子であるかどうか、わからない」だの、自身のキャラへの毒舌にくすりと笑わせてもらった。
2017/03/22
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