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風味絶佳 (文春文庫 や 23-6)

風味絶佳 (文春文庫 や 23-6)

風味絶佳 (文春文庫 や 23-6)

作家
山田詠美
出版社
文藝春秋
発売日
2008-05-09
ISBN
9784167558062
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風味絶佳 (文春文庫 や 23-6) / 感想・レビュー

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ヴェネツィア

6つの短篇からなる小説集。高橋源一郎氏の解説に書かれてしまって残念なのだが、6篇に登場する男たちは、職種は違うものの、いずれも身体を張って仕事に臨む現業職。また、そのいずれもが愛の物語なのだが、それらは多かれ少なかれ身体を伴うもの。愛は観念ではなく、身体なのだ。そうした中では最も身体性に乏しいのが、意外にも表題作。とは言っても「風味絶佳」であって、身体性に密着する。黄色いケースの森永ミルクキャラメル。懐かしくもあり、味蕾に溶けるその味を思い出してみると、またあらためて愛の身体性に想いをいたすのである。

2017/09/15

おしゃべりメガネ

高校生の頃、山田詠美さんの作品を同級生に薦めてもらい、何作か読みましたが、当時は正直馴染めませんでした。年月を経て、今こういう作品を読むと、改めて作者さんの豊かな才能を感じます。何よりタイトルが秀逸で、つい手にとってしまいます。6編からなる短編集ですが、どれも見事な人間ドラマが描かれており、性別年齢問わず、幅広い読者層に読んでもらいたい内容でした。詠美さんアレルギー気味だった自分ですが、やはり年齢とともに読む作品、作家さんも変化していきますね。それぞれの作品に深く考えさせられるテーマが書かれています。

2017/11/04

ちなぽむ and ぽむの助 @ 休止中

装丁はキャラメルなのに、こんなにも甘くないビターで格好良い恋愛小説は初めてかも。何も知らないままではいれなかった大人が、改めてあまく純粋な気持ちでする恋愛。自分の気持ちももはや真っすぐには表せない。複雑で相反していて、素直になれなくてセンシティブ。難しい言葉はないのに、とても文学的で美しく感じる文体もまた唯一無二。 今の季節に相まって「海の庭」が断トツで好き。「大人が初恋やり直すって、いやらしくて最高だろ?」なんて、「一日に一度は寂しいと思うことって、人を愛するこつだろう?」なんて、言ってみたい。

2019/06/11

びす男

ある人のたたずまいから、ふとした拍子にちらつく矜持と弱さ。心の深層を味わい尽くした短編集は表題通り、まさに風味絶佳。ごみ収集員や引っ越し屋、清掃作業員など、普段は触れあうことのないタイプの職人が多く登場し、それも他の小説にはない面白さになっていた。「人を情けないと思うのと、いとおしいと思うことってなんて似ているんだろう」。そう、山田さんの書く職人は、仕事に誇りをもって立派に勤めながら、どこかで情けない一面を持つ人たちだった。所謂「ギャップ萌え」を滅茶苦茶上手く描写し尽くしたような一冊。

2017/09/30

ゆいまある

短編集。共通するテーマは偏見持たれそうな職種で肉体労働している男と、精神的に不安定過ぎて世の中で生きていけそうにないほぼ無職女の共依存。どっちも世の中にあまり居場所がなさそうで、二人だけの閉じられた世界に生きようとする。密室での二人が熟し、発酵していく独特の匂いが漂ってくる。女を殴る男、手料理で男を繋ぎ止めようとする金銭感覚のおかしい女など禄でもなくて、好きになれないなあ。惚れた相手が一緒なら貧乏暮らしも天国なのかもしれないが、私は一人ぼっちでいいから破れた中古のソファがない部屋で暮らしたい。

2020/05/10

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