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レクイエム (文春文庫 し 32-5)

レクイエム (文春文庫 し 32-5)

レクイエム (文春文庫 し 32-5)

作家
篠田節子
出版社
文藝春秋
発売日
2002-04-10
ISBN
9784167605056
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レクイエム (文春文庫 し 32-5) / 感想・レビュー

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ヴェネツィア

渾身の短篇集。6つの短篇は濃淡の差はあるものの、いずれも極めてハイレベル。作家ご本人が「感傷的なアリア」と語る「彼岸の風景」が持つ小千谷の風土感が醸し出す小説空間は圧倒的だ。篇中では「コヨーテは月に落ちる」のシュールな味わいが群を抜くが、残念ながら結末の説明的な部分は余計。シュールな小説のままで十分に自立しえているのだから。巻末に置かれた表題作の「レクイエム」の発想のもとになっているのは奥崎謙三の「ゆきゆきて神軍」だろうし、また「コンクリートの巣」はユングのグレートマザーに触発されて書かれたものだろう。

2018/05/05

まこみん

趣の異なった6編の組曲の様な短編集。「ニライカナイ」「コヨーテは月に落ちる」は神秘的、幻想的。不思議な情景を見た女性の人生、出られないマンション迷路。「帰還兵の休日」優雅だったバブル期復活を夢見る男とホームレスの3人の老婆。「コンクリートの巣」こちらは現実的な児童虐待の痛ましさ。女の子の母への哀しい執着。ラストの表題作「レクイエム」は極限状況の伯父のおぞましく哀しい体験。その思いは形は思い通りでなかったけれど、新たな救済になり得てほんのり気持ちも救われた思い。

2017/04/05

Take@磨穿鉄靴

篠田氏の短編集。爽快感とは無縁なじっとりとした雰囲気の6編。「帰還兵の休日」「コンクリートの巣」が良かった。不況の影響で営業成績も生活の質も下がりそこから抜け出せない苦しさはリアルに伝わってくる。努力してない訳じゃないし、むしろ以前より心血を注いでいるのに結果が出ない。これは苦しい。ある程度の年齢を迎えたアスリートなんかは歳を重ねる度に同じような事を感じるかも。切なさ要素多めの短編集。★★★☆☆

2019/09/02

ざるこ

6篇。戦争、バブル崩壊、大病、虐待。人生を襲うさまざまな苦難。窮地に陥り死を意識した時に現れる幻。それは救いなのか黄泉への誘いか。どれも読み応え抜群。時代のうねりと共に大きく変遷する人生が濃厚に描かれ「幻」は幻覚ではなく追い詰められた者のリアルであるように感じる。10万円の手切れ金、投資、結婚、離婚。幸と不幸のループ「ニライカナイ」橋下に住む老女たちの華やかな過去「帰還兵の休日」大教団幹部の叔父の不思議な遺言が示す戦争の酷さ「レクイエム」が好き。「戦友会なんて思い出を語れる連中は本当の地獄を見ていない」

2020/04/22

(C17H26O4)

出口のない世界に死が終止符を打つ。生に迷ってしまった人達にとって、これは安らぎの死なのか否か、不気味な曖昧さが残る。先行きの見えない物語の閉塞感から解放されて胸をなでおろすのは、実は読者なのかもしれない。それぞれ全く異なる味わいを持っている六篇だが、『レクイエム』というタイトルが全てをうまく統括し、一つの世界観を作り上げているように思う。

2018/06/10

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