神の座 ゴサインタン (文春文庫 し 32-6)
神の座 ゴサインタン (文春文庫 し 32-6) / 感想・レビュー
ミカママ
文庫650ページに及ぶ大長編。国際結婚、都市部での農業、旧地主制度が生んだ保守的で軸のない後継者、宗教、信仰、とにかく書き切れないほどのモチーフとテーマが織り込まれている。小気味良い文章とその壮大な物語にこちらまで酔っ払ったような高揚感に包まれて読了。稀にみるエンタメ作品ではあるが、ファンとしてはそれぞれ個別テーマでじっくり読みたかった、というわがままも言ってみたい。
2021/04/10
ヴェネツィア
『聖域』に次ぐヒマラヤ3部作の2作目。タイトルはサンスクリット語で「神の座」と呼ばれる霊峰(8000m 級の1つ。チベット名シシャパンマ)の名。小説の終盤の重要な舞台だ。テーマは極めて明確で、「死と再生」の物語。地位にも財産にも恵まれた、しかし間もなく40歳になる輝和に欠落するものは嫁と跡取りであった。この欠落を埋めようとするところから物語が動き出すが、ここからはまさに彼にとっては思いもよらない破天荒な展開となってゆく。戸惑い、逡巡、後悔、絶望とあらゆる感情に翻弄され、全てを喪うことで真の再生を得る物語。
2019/10/06
あさひ@WAKABA NO MIDORI TO...
第10回(1997年)山本周五郎賞受賞作。一人の女のために社会的な地位と全ての財産を失った男が、最後に辿り着いた地、ネパール。神の座の麓で見て、そして感じたものとは。お金でも見栄でもない、人の原点とは、真の幸せとは・・・。圧倒的なスケールで、そんな事を問われ考えさせられる作品だったと思います。
2019/10/06
みも
得も言われぬとか…名状し難いとか…貧弱な語彙力ではその程度しか言葉に表せない自分がもどかしい。良い意味で著者の想いが掬い取れず、帰着点への予断を許さない卓抜した展開。その構成は論を超えた神聖な何者かによって導かれている様に見える。現実の生々しさを丹念に綴る土台に、極めてスピリチュアルな要素を取り入れるが、突飛さや幻惑感は立ち現れない。最後まで淑子の底意が知れない事で、作品の神聖さがいや増すといったところ。そして主人公の輝和が当事者であり、且つ観察者である事が、物語の構築手法として絶妙。コメントへ➡ネタバレ
2018/10/31
おいしゃん
【山本周五郎賞作品】読み応えのある作品を、と思い、篠田節子作品初読み。650ページというボリュームと、抜群のインパクトで、読み応えばっちり。ネパール人の妻を迎えた途端、名家が没落し財産を全て失い、妻が神と崇められるようになる。やがて夫は失踪した妻を探しにネパールへ…という突飛な展開なのだが、突飛さゆえに引き込まれるし、細かいところまで綿密な取材によって作りこまれているので、浮世離れ感がないのがすごい。
2017/04/07
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