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真鶴 (文春文庫 か 21-6)

真鶴 (文春文庫 か 21-6)

真鶴 (文春文庫 か 21-6)

作家
川上弘美
出版社
文藝春秋
発売日
2009-10-09
ISBN
9784167631062
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真鶴 (文春文庫 か 21-6) / 感想・レビュー

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ヴェネツィア

どうして真鶴に引き寄せられるのか。それは語り手であり、主人公の京にもわからない。あるいは作者自身にも明確な答えというのはないのかもしれない。そもそも、この小説には確かなものとては何一つない。13年前に失踪した夫の礼の行方も(生死さえも)、その理由もとうとう不明のままだ。そして今、青茲をも失ってしまいそうだ。「ついてくるもの」の不確かな確かさだけが、あるいは京にとっての実在なのだろうか。「愛」、「夫婦」、「家族」は、それがあると信じているからこそそこにある虚妄なのか。京の孤独は深くどこまでも沈潜してゆく。

2015/01/23

さてさて

『夫は死にたいと思ったのだろうか。それとも、生きたいと思ったから失踪したのだろうか』。そんな思いに囚われたまま十二年の歳月を送ってきた主人公の京。この物語では、そんな京が「真鶴」という土地を幾度も訪れる先の物語が描かれていました。どこか読みづらい文章の連続に、結果として一文一文にじっくりと向き合うことになるこの作品。『ついてくるもの』という謎の存在に何故か心囚われるこの作品。本文中に70回も登場する「真鶴」という地名に、読者まで心を持っていかれそうにもなる終始不思議な雰囲気感に包まれた味のある作品でした。

2023/04/29

あさひ@WAKABA NO MIDORI TO...

う~ん、この世界観をどう評価したらいいんだろう。著者の作品は初読みだけど、芥川賞作家らしく、私の感性、分かる人だけに分かってもらえればいいんで~ってな感じで、変に読者に媚びないところは立派。不思議な雰囲気のする作品ではあったが、正直よく分からなかった。まあ、無理やり分かろうとすることもないか。もう少し代表的な作品から手につければよかったかも。

2019/09/22

yoshida

夫が失踪し、母と娘と暮らす京。夫が失踪前に記した「真鶴」と言う地名。京は真鶴を繰り返し訪れる。真鶴で彼岸と此岸をたゆとう京。文章からの寂寥感が印象に残る。この危うさと寂寥感が川上弘美さんの妙味だと思う。京ととある人物の別れの場面等は印象深い。成長し離れゆく京の娘も印象に残る。また、文体や表現の繊細さも川上弘美さんの持ち味だと思う。彼岸と此岸が交差するので、好みは別れる作品だと思う。私もこれくらいのページ数で合っていた。これ以上の長さになれば読み切れただろうか。心に澱のように印象が残る作品でした。

2021/12/05

ゴンゾウ@新潮部

失踪した夫のことを心の奥底に思い続ける京。謎のオンナに付きまとわれながら現実と幻想の世界、真鶴を彷徨う。夫礼と愛人青慈を重ね合わせながら、礼と過ごした日々を思い出していく。危うく礼の世界に飲み込まれそうになりながら、礼の死を受け入れる。喪が明けたように光が射し込む娘百と心かようラストがとても美しい。

2016/12/30

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