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1809ナポレオン暗殺 (文春文庫 さ 32-1)

1809ナポレオン暗殺 (文春文庫 さ 32-1)

1809ナポレオン暗殺 (文春文庫 さ 32-1)

作家
佐藤亜紀
出版社
文藝春秋
発売日
2000-08-01
ISBN
9784167647018
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1809ナポレオン暗殺 (文春文庫 さ 32-1) / 感想・レビュー

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ヴェネツィア

ナポレオンがオーストリアに侵攻した1809年を選んだ作家的センスはさすがに秀逸。この時期はナポレオンのいわば絶頂期であるとともに衰退の兆しが見え始めた時でもあるからだ。佐藤亜紀は、オーストリアの地でナポレオン暗殺計画を虚構するのだが、そのすべての軸に視点人物としてフランス軍の工兵大尉のパスキを主人公に立てたこともまた実に心憎いばかりの着想である。彼の周縁はウストリツキ公爵をはじめアクの強い人物揃いである。紅一点のクリスティアーネもまたしかり。ただ、物語の妙味としては彼女にしゃべらせ過ぎだ。

2021/03/05

ヨクト

ナポレオン暗殺計画を取り巻く人間活劇。戦闘シーンがあるわけではないし、さらに言えばナポレオンもほとんど出てこない、主に暗殺をめぐる人と人との駆け引きや騙し合いの応酬、それがこの物語。その会話が非常にシブくていちいちかっこいい。当時の世間の雰囲気が伝わってくる描写力は流石佐藤亜紀。圧巻だった。

2016/06/05

harass

歴史背景などの説明がほぼ無いのはいつものことで、ナポレオン時代のフランス工兵の話を前提なしで読むことになる。筆力はあいかわらず冴え渡っていて、当時の各国の密偵や軍隊組織や貴族の描写に唸らせられる。だが話の筋として物足りない。現代のエンターテイメントに慣らされた人間にはちょっと地味に感じる。まあ筋の面白さが得意な作家ではなくて語りや表現の上手い人だからないものねだりにすぎないのだが。 単行本で出版されたときはこの文庫本にはある副題がなく「1809」だけの題名だったようだ。その姿勢に驚く。

2014/01/28

びっぐすとん

佐藤さんらしい重厚な大舞台、そして退廃と美青年(美中年?)。現代の戦争もしくは日本のような島国を想像すると理解しがたいが、これは前時代の貴族や皇帝が存在した時代だから戦争のやり方も随分違う。それでも敵方と食事したり、交友を持つってありえるの?兎に角敵味方入り乱れて騙し騙されなので、先が見えずハラハラした。ハプスブルクの歴史は興味があって多少わかるけど、ナポレオンに興味がなくてフランスの歴史が判らないのが残念。オーストリアという国はない(当時)のだ、という一文に、これだけ広い領土をよく治めてたなと思う。

2020/05/10

あ げ こ

はずれがない。もれなく面白くて腹立たしい。とんでもなく凄い瞬間を目撃しているのではないかと思う。とんでもなく重大で、深刻で、恐ろしく危うい状況、その最中と言うか渦中、ど真ん中にいると言う高揚感。相当にスレスレ。常に瀬戸際、紙一重。気がつけば抜き差しならぬ今が延々。逃げ場のなさよ。けれどやってのける。やってのけてしまう。割合に落ち着いてこなす。賭けも、謀略も、抵抗も、その錯綜具合も、そのスケールも、高まって行き、極まって行き、けれど物語はどこまでも華麗なまま、冷静さを失わず、軽やかに、滑らかに、走り続ける。

2018/11/29

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