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氷平線 (文春文庫)

氷平線 (文春文庫)

氷平線 (文春文庫)

作家
桜木紫乃
出版社
文藝春秋
発売日
2012-04-10
ISBN
9784167836016
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氷平線 (文春文庫) / 感想・レビュー

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ヴェネツィア

釧路をはじめ道東を舞台に描かれた6つの短篇を収録。中には、例えば「霧繭」のように道東であることの必然性の乏しいものもあるが、他は概ねこの地の風土を反映している。とりわけそれが顕著なのは、冒頭に置かれた「雪虫」であり、そこには世代の苦しみと、もうどうしようもない逼塞感の中に喘ぐ姿がある。また、道東ならではの流氷を背景に描かれた表題作「氷平線」は、作りこみ過ぎたがためにエンターテインメント小説としてはともかく、文学としての純度は低くなってしまったが、それでもそこにはこの作者特有の作品世界が展開する。

2019/03/18

ミカママ

男と女は、その関係が始まったときから終わりが見えている。結婚していない(できない)ふたりであれば、なおさらのこと。北の大地を這うようにして生きる男女の出会い、とまどい、絶望が描かれた作品。私自身の個人的心情で『海に帰る』の寺町と7歳年上の絹子の交情が身につまされた。女がいつか目の前から消えてしまうのではないかという、彼の不安が愛おしい。最愛の言葉って「好きだよ」とかじゃなくて「ずっと一緒にいよう」なんじゃないかなぁ、なんてね。桜木さんの個人的ベストかも(オイオイまたかよ・笑)。

2017/07/23

さてさて

北海道の圧倒的な大自然の中に生きる人々の力強い日常を見事なまでに描写したこの作品。それは、『こうして脈々と受け継がれてゆく平穏は、人ではなく集落自体の生命力かもしれない』という北国の大地の恵みを受け、北国の大地に生活の糧を求め、そして、北国の大地に人生を捧げてきた人々の生き様を見やるものでした。これが、まさかのデビュー作!という桜木紫乃さんの研ぎ澄まされた文章表現の妙を垣間見ることのできたこの作品。まるで長編小説を読み終えたかのようにも感じるその読後に、深い余韻がいつまでも残り続けるのを感じた絶品でした。

2021/05/03

サム・ミイラ

男性の私は女性との違いを言い聞かされてきました。先輩にもメディアにも。いわく女性は過去を綺麗に忘れ二度とふり返らない。女々しいのは男。女性は未来に男性は過去に生きる云々。しかしこの小説を読んだ時、男女に違いはないのだと確信しました。人は同じように痛みや苦しみを抱え生きている。各々の出会いと別れと愛の形。ひとつだけ言えるのは精神年齢はやはり女性が圧倒的に上。男は幼い。でもいつか理屈ではなく分かる時はくる。それが生きるという事なのだと。表題作はじめ全ての物語に共通する作者のメッセージに心震える傑作です。

2018/08/05

yoshida

桜木紫乃さんのデビュー作。短編6編。ほの暗い道東の空気のもと、男女の機微が描かれる。特に感じるのは女性のしなやかさ強さ。標題作での母の行動。そして友江の行動。どちらも主人公を思ってのことと思う。しかし、母の言葉を受けた友江の心中はいかばかりか。「雪虫」での四季子との訣別とマリーとの未来を感じるラスト。「霧繭」での真紀の矜持。やよいの覚悟。どの作品も感情の生々しさが質感を持って伝わる。常識では考えられないような登場人物の心の揺らぎ。これを自然に読ませる筆力が桜木紫乃さんの作品の魅力なのかも知れない。良作。

2018/12/24

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