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岸辺の旅 (文春文庫 ゆ 7-2)

岸辺の旅 (文春文庫 ゆ 7-2)

岸辺の旅 (文春文庫 ゆ 7-2)

作家
湯本香樹実
出版社
文藝春秋
発売日
2012-08-03
ISBN
9784167838119
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岸辺の旅 (文春文庫 ゆ 7-2) / 感想・レビュー

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ヴェネツィア

いかなるメッセージも持たない、ましてや教訓などとは対極にある、純粋に小説が小説として、ぽっかりと中空に浮かぶように存在するーそんな小説である。しいてプロットを求めるならば、優介と「私」の旅がそれである。ただ、それはどこからどこへとは問えない旅である。ここから、どこへとも知れないどこかへの。行く先々の地には、それぞれそこだけで完結するリアリティが存在する。しかし、そこで定点を結ぶことはない。どんなに私がそれを望もうとも。翻って今、「私」(作中の語り手である、そしてそれを読んでいる)の世界さえもが揺らぎだす。

2020/10/12

SJW

「岸辺の旅」は川岸や海岸を辿る旅かと思ったが、実際に川岸や海岸を辿っているものの、本来の意味は此岸と彼岸の意味だった。3年前に失踪した夫が現れ、川岸や海岸を辿る流浪の旅が始まる。旅の途中で明らかになる夫の過去、知らなかった人柄が徐々に明らかになり、失踪していた3年を遡り失った魂を再生していく。しっかりと別れの挨拶ができなかった未練が強く成仏できなかったのだろうが、何も知らされずに連れ回される夫の妻、瑞希が可哀想過ぎる。一つの救いは夫婦生活での薄かった繋がりを取り戻せて、見送ることができたこと。生と死の間の

2018/02/27

KAZOO

読んでいてどっか既視感のようなものを感じていたら映画化された作品の原作であったということが途中でわかりました。「ポプラの秋」もそうでしたが、結構印象に残る感じがします。この原作も死んでしまった旦那とのやり取りがなんか心にしみる感じがしました。

2017/05/01

おしゃべりメガネ

デビュー作『夏の庭』を読了して以来、約6年ぶりの湯本さん作品です。映像化を控え、脳内では完全に浅野さん&深津さんで再生されました。ページ数の割に深く、重たい内容で明確なインパクトはありませんが、ボンヤリとした雰囲気がずっと最後まで継続され、そのボンヤリ感が本作の醍醐味なんだと。あまり他の作品では体験できない「生と死」のギリギリの境界線ワールドみたいなものを味わえました。3年前、謎の失踪から突如戻ってきた夫「優介」と、帰りを信じてひたすら待ち続けた妻「瑞希」との何とも言えない愛の姿がとても印象的でした。

2015/09/30

ちなぽむ and ぽむの助 @ 休止中

しらたまをつくっていると失踪した夫が戻ってきた。からだは水の底で蟹に食べられたと言う。 死んだ夫が戻ってきた道をふたりで辿る旅は時間も季節も、場所もすべてとりとめがない。生と死は親和していてふつうに生活をしているひとのなかに死者が混じっていたりする。旅の景色は泣けるほど美しく、出会う人たちは優しくて悲しく、遠くない将来の旅の終わりを予感させる。大切な人とこんな風にお別れが言える世界はなんて素晴らしいんだろう。 夏の庭もそうだけど、湯本さんの死への視点はとても優しくて近しい。

2018/07/18

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