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ロマンス (文春文庫 や 54-1)

ロマンス (文春文庫 や 54-1)

ロマンス (文春文庫 や 54-1)

作家
柳広司
出版社
文藝春秋
発売日
2013-11-08
ISBN
9784167838867
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ロマンス (文春文庫 や 54-1) / 感想・レビュー

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カナン

やるせない、という思いでただ涙が滲む。時は昭和初期、ロシアの血を引く子爵清彬の親友、嘉人に殺人容疑がかけられた日から歯車は狂い始めた。天皇制への不満、押し寄せる華族不要論、共産主義に侵食され左右に揺れる視界、激動しぎりぎりと捻じれていく社会の中で、誰かのためにという精神論だけが空回りしていく。紫煙の中で碧に透けるアブサンの香り。小鳥の胸から溢れた赤。糸を切られたマリオネット。理想は手に届かないからこそ理想として在り、あの日見上げた青い空は何処にもなく、小さく真似た発砲音と共に、彼のロマンスは事切れたのだ。

2019/09/23

ばう

★★切なく物悲しい気持ちで読了。麻倉子爵の親友にかけられた殺人の疑いから始まるこのお話は、舞台となる昭和8年の日本の軍部、特高、共産主義者などの状況も絡んでスピーディーに展開していきます。「ロマンス」とは、つまり憧憬、叶わぬ夢?主人公の清彬が青空を清々しい気持ちで見上げることの出来る日が来ますように、と祈るような気持ちで本を閉じました。

2019/03/14

ぺぱごじら

柳広司さんの描く戦前の薄暗い空気の匂いにいつも惹かれてしまう。昭和8年、大正浪漫の残滓と挙国一致の生臭さが混交する不安定な時代を、どこ吹く風とばかりに飄々と生きる帰国子女で混血の華族青年。『日本人だが、日本人らしくない』『華族だが、皇家の藩屏足り得ぬ輩』彼の居場所は何処にもあるが何処にも安らぎは、ない。それでも時代をさまよう彼の心にあるのは、あの日酒場で見た曇りない青空。遠くの的を射抜くような鋭い眼は、生き抜く為には大切だが、実は人は鈍く騙され易い方が幸せなのかとすら感じる切ない物語。2013-185

2013/11/20

えこ

タイトルは『ロマンス』ですが、男女の恋愛中心のお話ではありません。でも、明治期の異国の文化の影響を受けた華やかな雰囲気はありました。華族の生活や軍人の思想が入りまじり、『ジョーカーゲーム』に負けず劣らず面白かったです。

2016/05/27

絳楸蘭

昭和のはじめの華族ってだけでテンションあがる!優雅できらびやかな中に見え隠れする、どこか艶かしくて閉ざされ、廃れていく感じがしっかり出ている。自分の中のロマンスの意味がちょっと増えた。

2013/12/26

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