かわいそうだね? (文春文庫 わ 17-2)
かわいそうだね? (文春文庫 わ 17-2) / 感想・レビュー
ハッシー
【女性にしか書けない文章。女性にしかわからない感情。】綿矢りさはアイスピックのような鋭利な感性で人の心を突き刺す。彼女の文章を読んでいると息が苦しくなってくる。女性が一つの言葉やしぐさについて目まぐるしく思考が働いているのがわかる。男性が苦手な「察する」過程を丁寧に描いている。女性であればもっと深く理解し、強く共感できるのに惜しい。
2016/11/13
さてさて
文章ってこんなにも面白いんだ、と綿矢さんの作品を読んで文章というものが持つ可能性について、改めて興味がわきました。人の醜い部分をコミカルにサラッと描いてしまう綿矢さん。それでいて、よくよく考えるととても重いことを言っていることに驚愕してしまうこの作品。切れ味鋭く、そしてテンポよく展開するその先に待つ、ある意味で日本語で最強と思われる一言でストンと有無を言わさず物語を締めてしまうこの大胆な結末!思わず、これ、すごいなぁと感じた作品でした。
2021/02/02
にいにい
「女性同士の複雑怪奇な関係」を描いた綿矢りささんの一冊。「かわいそうだね?」のアキヨの狡さ、図太さ、本当にこんな人いるのかな?隆大の優柔不断さにも、モヤモヤ。樹理恵が最後に取った行動は、本当にしゃーない。桃色の色っぽさも同感。「亜美ちゃんは美人」の亜美のような性格を持った美人いるのかな?誰からも愛されることが寂しく孤独?坂木ちゃんは、居そうだな。樹理恵、亜美、坂木、みんなそれぞれ、自分の心の奥からの要求に忠実に、誠実に過ごせればいいのかな?この作品が、本当に居る人達がモデルとならなら、世の中凄い!!
2015/11/27
エドワード
樹理恵は恋人の隆大から、失業中の元彼女アキヨをしばらく同居させる、と告げられる。そんなのありか?隆大とアキヨがアメリカ育ちであることから、日米の文化の違いだ、と無理やり納得しようとする樹理恵。自分の心が狭いのか、と悩む樹理恵。東直子さんの的確すぎる解説にあるとおり、樹理恵とアキヨの正反対の資質を、衣服や食事の仕方で描き出す綿矢りささんの筆力が素晴らしい。<かわいそうだね?>の?が絶妙に<今>を表現している。二人の正反対の女性の心理の裏の裏まで描く「亜美ちゃん」も秀作だ。本当の心は自分にも解らないものだな。
2014/06/13
黒瀬 木綿希(ゆうき)
申し訳ないが表題作であり、大江健三郎賞を受賞した『かわいそうだね?』が後半に掲載されている『亜美ちゃんは美人』に完全に喰われてしまった。それくらい亜美ちゃんのインパクトが強かった。とても綺麗で性格も良い亜美ちゃんが、何故こんな男に惹かれて堕ちていくのか。それを止められない、止めようとしないさかきちゃんは薄情ではないか。それとも常にチヤホヤされてきた亜美ちゃんにようやく勝てる、とほくそ笑んでいるのか。そう思ってしまったがあまりにも浅はかだった。【誰からも愛される究極の寂しさ】そんなもの、私は知りたくない
2019/11/01
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