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長いお別れ (文春文庫)

長いお別れ (文春文庫)

長いお別れ (文春文庫)

作家
中島京子
出版社
文藝春秋
発売日
2018-03-09
ISBN
9784167910297
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あらすじ

認知症を患い、正常な記憶が失われていく父。日々発生する不測の事態のなかでも、ときには笑いが、ときにはあたたかな感動が訪れる。

「十年か。長いね。長いお別れ(ロング・グッドバイ)だね」
「なに?」
「ロング・グッドバイと呼ぶんだよ、その病気をね。少しずつ記憶を失くして、ゆっくりゆっくり遠ざかって行くから」

東家の大黒柱、父・昇平はかつて区立中学校長や公立図書館の館長をつとめ、十年ほど前から認知症を患っている。
長年連れ添った妻・曜子とふたり暮らし。
娘が三人、長女の茉莉は夫の転勤で米国西海岸暮らし。次女の奈菜は菓子メーカー勤務の夫と小さな子供を抱える主婦、三女の芙美は独身でフードコーディネーター。

ある言葉が予想もつかない別の言葉と入れ替わってしまう。
迷子になって遊園地へまぎれこむ。
入れ歯の頻繁な紛失と出現。
記憶の混濁により日々起こる不測の事態――しかし、そこには日常のユーモアが見出され、昇平自身の記憶がうしなわれても、自分たちに向けられる信頼と愛情を発見する家族がいつもそばにいる。

認知症の実父を介護した経験を踏まえて書かれた短編連作。
暗くなりがちなテーマをユーモラスに、あたたかなまなざしで描いた作品は、単行本発表時から大きな話題になり、中央公論文芸賞や日本医療小説大賞にも選ばれた。

映画化決定!

解説・川本三郎

「長いお別れ (文春文庫)」のおすすめレビュー

「夫はわたしのことを忘れてしまいました」蒼井優、竹内結子出演映画『長いお別れ』で描かれる認知症の父と家族の物語

『長いお別れ』(中島京子/文藝春秋)

ええ、夫はわたしのことを忘れてしまいましたとも。で、それが何か?

 認知症と診断された夫を自宅で支え続け、10年。曜子のたどりついたこの言葉を、何度も何度も、読み返した。

 その直前に書かれた「この人が何かを忘れてしまったからといって、この人以外の何者かに変わってしまったわけではない」という一文も。ここだけ抜き出せば、きれいごとに聞こえるかもしれない。けれど、ゆるやかに記憶がこぼれ落ち、曜子の存在さえ忘れていった夫・昇平のいちばん近くで、頭をかきむしりたくなるくらいのストレスと哀しみを抱えながら、それでも寄り添い続けることを決めた彼女の言葉だったから、その重みと強さを反芻せざるを得なかった。

 5月31日(金)に実写映画の公開を控える『長いお別れ』(中島京子/文藝春秋)は、アルツハイマー型認知症を発症した東昇平をめぐる、家族の物語だ。

 昇平がケーキの銀紙を集め、一枚ずつ引き伸ばして、とっておく。子供のようなそのしぐさに、3人の娘たちが呆気にとられる冒頭で、一気に引き込まれた。父の内側でなにかが変容している、という驚…

2019/5/30

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「認知症は、そんなに悪いことばかりじゃない」『長いお別れ』『ばあばは、だいじょうぶ』…認知症になった家族を描いた注目の4作品

 “家族と過ごす時間”は、とくに血の繋がっている間柄だと、多少の不義理をしたくらいでは関係は壊れまいという安心感から、あとまわしにしがち。いつまでも自分が子どものころの、面倒を見てくれた元気いっぱいな彼らの姿が、脳裏に焼きついているのも大きいだろう。

 だが親も祖父母も、自分が大人になった分だけ年を重ねて老いている。懸念される症状の一つが“物忘れ”――認知症だ。5月には立て続けに2作、認知症がテーマの映画が公開される。誰にとっても他人ごとではないテーマだからこそ、家族との久しぶりの時間も増えるこのゴールデンウイークに、読んでじっくり考えたい4冊を、映画原作を含めてご紹介しよう。

■『わたしのお婆ちゃん 認知症の祖母との暮らし』(ニコ・ニコルソン/講談社)

『わたしのお婆ちゃん 認知症の祖母との暮らし』(ニコ・ニコルソン/講談社)

もうね お母さんと一緒に死のうかと思って

 それは、祖母との2人暮らしに、静かに追い詰められていた母からのSOSだった。

 2011年3月11日、宮城にあるニコさんの実家は津波によって流された。母ルと婆ルは2階に逃れて一命をとりとめ…

2019/4/30

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厳格な父が認知症になった――映画「長いお別れ」豪華キャスト&特報解禁で早くも大反響!

 2019年5月公開の映画「長いお別れ」からキャストが発表され、合わせて特報映像が解禁。ファンから「実力派で固めてきたな」「ハンカチ忘れず劇場に行かなきゃ」と大きな反響が巻き起こっている。

 原作は中島京子の同名小説で、記憶を失いゆく父と家族の温かく切ない日々を描く。久しぶりに集まった娘たちに告げられる、厳格な父・昇平が「認知症」になったという事実。そんな昇平に戸惑いながら向き合うことで、自分自身を見つめ直していく家族たち。そしてある日、家族の誰もが忘れかけていた“愛しい思い出”が昇平の中に今も息づいていると知り─。

 監督を務めるのは、宮沢りえ主演映画「湯を沸かすほどの熱い愛」で日本アカデミー賞など国内の映画賞を席巻した中野量太。キャストは昇平の娘で恋に夢に思い悩む次女・芙美を蒼井優、慣れないアメリカでの生活に困惑する長女・麻里を竹内結子が演じる。また昇平の妻であり、専業主婦として家族を献身的に支えてきた曜子役に松原智恵子。元中学校校長で認知症によって記憶を失いゆく昇平役として、名優・山崎努が名を連ねた。

 解禁となった特報映像は、キャラクター紹介を…

2019/2/3

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長いお別れ (文春文庫) / 感想・レビュー

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鉄之助

誰にでも訪れる「老後」。世の中、思い通りにならないことだらけ、と思い知らされる1冊だった。しかし、決して読後感は悪くない。「QOL」クオリティー・オブ・ライフ。人生における質を高める、とは人それぞれ個人個人によって違っていいのだ、と心底から思った。入会費2~5000万円、月々の支払いも25万円と高額で、なおかつ、1000人待ちの老人福祉施設に入ったとしても、その人は幸せに死を迎えられる、とは限らない。主人公の老人と、見ず知らずの二人の幼い姉妹がメリーゴーランドに乗る第1章のシーンが、たまらなく美しい。

2019/06/09

ケンイチミズバ

山田洋次監督が描く家族の日常みたいだった。とてもよかった。認知症でも時に会話が成立してしまうのはユーモラスだな。私の母も認知症が進んで施設に入所した。母を捨てたような後ろめたい気持ちが今もあるが一緒に暮らすことは無理だ。毎日のように施設から連絡がある。洗剤を飲んだ、他人の歯ブラシを勝手に使ったり捨てたり、初めからなかったモノやお金を盗まれたと騒いだり、切りがない。面会に行くと必ず家に帰りたいと言いながらも別の会話をすると帰りたい気持ちすら忘れてしまう。血の繋がらないこの人から虐待も受けたけど今は許すよ。

2019/02/12

五右衛門

読了。私自身、男のためかあまりにも身に摘まされる想いで読み終わりました。辛いですよね。ご本人も、ご家族も。病気だと解っていてもどうしようもない環境ですもんね。子供たちには各々自分達の生活があり妻にばかり頼れば共倒れ、やるせなさが伝わってきました。自分だけは【勝ってな思い込み】ボケないと思っていてもこればかりは解らないですよね。こりゃ早目に終身特養予約だな。周りの人に迷惑かけたくないものね。

2019/03/11

新地学@児童書病発動中

中学校の校長だった東昇平が認知症にかかり、妻と3人の娘の世話を受けるようになる。彼の認知症は徐々に進行し、妻も網膜剥離を患って……。私のように親の介護をしている人間は共感できる小説。新薬のメマリーを、妻の曜子が躍起になって手に入れようとするところなど、他人の事には思えなかった。良い薬がないので、新しい薬ができたらそれに縋りたくなる。昇平が故郷に帰りたがるところも、母にそっくりでその迫真の描写に唸った。ユーモラスに暖かく描かれているが、これが日本の現実だ。それを知らしめる力を持った作品だと思う。

2018/05/06

しいたけ

身内に認知症がいると読むのが辛いんじゃないかと躊躇していたが、心配は無用だった。ゆっくり失くなっていく記憶。その時間は、次の代にとっては少しずつ積もっていく記憶となる。温かく可笑しみのある日常。切なさも、ほんの少し。優しい家族の物語に気持ちが澄んでいく。その人の記憶の中にしかない事柄は、何処に行ってしまうのだろう。私しか持っていない私の記憶は私が手放したとき、もと居た時間に帰ればいい。だとしたら、それは何だか嬉しいこと。やり直しはないと思っていた人生が、実は再生だったらいい。明るい夢を描きながら読んだ。

2019/01/24

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