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長いお別れ (文春文庫 な 68-3)

長いお別れ (文春文庫 な 68-3)

長いお別れ (文春文庫 な 68-3)

作家
中島京子
出版社
文藝春秋
発売日
2018-03-09
ISBN
9784167910297
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「長いお別れ (文春文庫 な 68-3)」のおすすめレビュー

「夫はわたしのことを忘れてしまいました」蒼井優、竹内結子出演映画『長いお別れ』で描かれる認知症の父と家族の物語

『長いお別れ』(中島京子/文藝春秋)

ええ、夫はわたしのことを忘れてしまいましたとも。で、それが何か?

 認知症と診断された夫を自宅で支え続け、10年。曜子のたどりついたこの言葉を、何度も何度も、読み返した。

 その直前に書かれた「この人が何かを忘れてしまったからといって、この人以外の何者かに変わってしまったわけではない」という一文も。ここだけ抜き出せば、きれいごとに聞こえるかもしれない。けれど、ゆるやかに記憶がこぼれ落ち、曜子の存在さえ忘れていった夫・昇平のいちばん近くで、頭をかきむしりたくなるくらいのストレスと哀しみを抱えながら、それでも寄り添い続けることを決めた彼女の言葉だったから、その重みと強さを反芻せざるを得なかった。

 5月31日(金)に実写映画の公開を控える『長いお別れ』(中島京子/文藝春秋)は、アルツハイマー型認知症を発症した東昇平をめぐる、家族の物語だ。

 昇平がケーキの銀紙を集め、一枚ずつ引き伸ばして、とっておく。子供のようなそのしぐさに、3人の娘たちが呆気にとられる冒頭で、一気に引き込まれた。父の内側でなにかが変容している、という驚…

2019/5/30

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「認知症は、そんなに悪いことばかりじゃない」『長いお別れ』『ばあばは、だいじょうぶ』…認知症になった家族を描いた注目の4作品

 “家族と過ごす時間”は、とくに血の繋がっている間柄だと、多少の不義理をしたくらいでは関係は壊れまいという安心感から、あとまわしにしがち。いつまでも自分が子どものころの、面倒を見てくれた元気いっぱいな彼らの姿が、脳裏に焼きついているのも大きいだろう。

 だが親も祖父母も、自分が大人になった分だけ年を重ねて老いている。懸念される症状の一つが“物忘れ”――認知症だ。5月には立て続けに2作、認知症がテーマの映画が公開される。誰にとっても他人ごとではないテーマだからこそ、家族との久しぶりの時間も増えるこのゴールデンウイークに、読んでじっくり考えたい4冊を、映画原作を含めてご紹介しよう。

■『わたしのお婆ちゃん 認知症の祖母との暮らし』(ニコ・ニコルソン/講談社)

『わたしのお婆ちゃん 認知症の祖母との暮らし』(ニコ・ニコルソン/講談社)

もうね お母さんと一緒に死のうかと思って

 それは、祖母との2人暮らしに、静かに追い詰められていた母からのSOSだった。

 2011年3月11日、宮城にあるニコさんの実家は津波によって流された。母ルと婆ルは2階に逃れて一命をとりとめ…

2019/4/30

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厳格な父が認知症になった――映画「長いお別れ」豪華キャスト&特報解禁で早くも大反響!

 2019年5月公開の映画「長いお別れ」からキャストが発表され、合わせて特報映像が解禁。ファンから「実力派で固めてきたな」「ハンカチ忘れず劇場に行かなきゃ」と大きな反響が巻き起こっている。

 原作は中島京子の同名小説で、記憶を失いゆく父と家族の温かく切ない日々を描く。久しぶりに集まった娘たちに告げられる、厳格な父・昇平が「認知症」になったという事実。そんな昇平に戸惑いながら向き合うことで、自分自身を見つめ直していく家族たち。そしてある日、家族の誰もが忘れかけていた“愛しい思い出”が昇平の中に今も息づいていると知り─。

 監督を務めるのは、宮沢りえ主演映画「湯を沸かすほどの熱い愛」で日本アカデミー賞など国内の映画賞を席巻した中野量太。キャストは昇平の娘で恋に夢に思い悩む次女・芙美を蒼井優、慣れないアメリカでの生活に困惑する長女・麻里を竹内結子が演じる。また昇平の妻であり、専業主婦として家族を献身的に支えてきた曜子役に松原智恵子。元中学校校長で認知症によって記憶を失いゆく昇平役として、名優・山崎努が名を連ねた。

 解禁となった特報映像は、キャラクター紹介を…

2019/2/3

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長いお別れ (文春文庫 な 68-3) / 感想・レビュー

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ヴェネツィア

私が購入した本は表紙カヴァーが2重になっていて、外側のそれは映画版の記念撮影のようなスチール。中央に笑顔の蒼井優さんとブスッとした山崎努さん、その周囲に主要な登場人物たちを配したもの。映画は見ていないのだが、小説の昇平に山崎努のあのクセのある表情と演技がが重なって困った。さて内容はというとアルツハイマーの進行が描かれるのだが、最初はユーモラスな感じもしたものの、後半では怖くなってくる。明日は我が身かも知れないのだから。小説の構成は、イントロダクションとエピローグが実に効果的。

2020/07/13

ミカママ

実に上手い❗️チャンドラーを思わせるタイトル、内実はハードボイルドの古典とはまったく無関係の、認知症を患った元校長である老人と、その家族の物語。悲壮であるはずのストーリーにもかかわらず、あちこちに潜めたユーモア。アメリカで教育実習を受けたココ・マッカリーナとしての経験も大いに活かされて書き込まれている。ラストの描写には思わず喝采したくなった。

2019/01/29

鉄之助

誰にでも訪れる「老後」。世の中、思い通りにならないことだらけ、と思い知らされる1冊だった。しかし、決して読後感は悪くない。「QOL」クオリティー・オブ・ライフ。人生における質を高める、とは人それぞれ個人個人によって違っていいのだ、と心底から思った。入会費2~5000万円、月々の支払いも25万円と高額で、なおかつ、1000人待ちの老人福祉施設に入ったとしても、その人は幸せに死を迎えられる、とは限らない。主人公の老人と、見ず知らずの二人の幼い姉妹がメリーゴーランドに乗る第1章のシーンが、たまらなく美しい。

2019/06/09

ケンイチミズバ

山田洋次監督が描く家族の日常みたいだった。とてもよかった。認知症でも時に会話が成立してしまうのはユーモラスだな。私の母も認知症が進んで施設に入所した。母を捨てたような後ろめたい気持ちが今もあるが一緒に暮らすことは無理だ。毎日のように施設から連絡がある。洗剤を飲んだ、他人の歯ブラシを勝手に使ったり捨てたり、初めからなかったモノやお金を盗まれたと騒いだり、切りがない。面会に行くと必ず家に帰りたいと言いながらも別の会話をすると帰りたい気持ちすら忘れてしまう。血の繋がらないこの人から虐待も受けたけど今は許すよ。

2019/02/12

あきぽん

認知症の夫を10年にわたり老々介護する妻と3人の娘の物語。ずっと前から読まなければと思っていた本だったけど、かなり辛い読書体験だった。老・病・死は誰もが目を背けたい、しかし避けられない現実だ。この本の家族はとても仲が良く、お父さんが妻と娘たちに心から愛されているのが小説としての救い。

2020/02/17

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