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冬の光 (文春文庫)

冬の光 (文春文庫)

冬の光 (文春文庫)

作家
篠田節子
出版社
文藝春秋
発売日
2019-03-08
ISBN
9784167912376
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冬の光 (文春文庫) / 感想・レビュー

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ヴェネツィア

これまでの篠田節子とはかなり違った印象だ。けっして悪い意味ではないけれど、作家も年をとったかと思う。かつての直木賞作『女たちのジハード』の若さゆえのもどかしさはここにはない。若き日を経過し、壮年期も経て、初老の域にさしかかろうとする男女を描く。様々な意味で人生の終焉を前にした寂寥感に溢れる小説だ。こんな作品を書くようになった篠田節子にあらためて感無量の思いを抱く。康宏と紘子の青春の光芒が、自身のその時代と重なるからでもある。私たちにとって、その終わりはどんな形をとりうるのだろう。それが篠田節子の問いだ。

2019/09/06

あさひ@WAKABA NO MIDORI TO...

高く評価している方を何人かお見受けしたが、なるほど納得!自分もこの手の作風はドンピシャで、今年のトップ10入りを検討中~♪バブルの頃、家庭を顧みることもなく、それが当たり前と仕事に邁進した一人の男。四国遍路を終え、東京へ向かうフェリーから冬の海へ消えたところから物語は始まる。確かに家族からすれば善き夫、父親とは言えなかったのかもしれない。決して立派とは言えず、赦されざるべきなのかもしれないが、自分にはそこに等身大の男の生きざまを見たような気がしてならない。家族への想いに満ちた冬の光が切なく尾を引く。

2020/12/23

まこみん

62歳の康宏は四国遍路の帰途フェリーから海に消えた。次女の碧は、家族を欺いて愛人と関わり続けていたという父の痕跡を辿っていく。妻の立場では許しがたい長年に渡る裏切りなのだけど、康宏にとっては今の家族があってこそで、純粋過ぎて年取っても寛容さが育まれなかった紘子とはたとえ結婚しても上手くはいかなかっただろう。東日本大震災の中ボランティアをやり抜き帰宅した康宏は後の人生に虚無感を抱く。読む読者の年代、性別、立場によって様々な見方になる深い一冊。私は只々やるせなさで胸が詰まった。

2019/06/05

naoっぴ

これはもしかしたら女にはエゴにしか見えない男のロマンというものか?物語は自死した父の足跡をたどる娘と父康宏の、相反するふたつの視点から描かれる。康宏にとって社会的野心や憧れ続けた女性との関係はどこまでも崇高であり大切な人生のひとつ。一方、妻や娘にはそれは浮気性の駄目男としか映らない。男女のとらえ方の違いか夫婦の相性の問題か、傷つけた側が悪いのか。心の中で相反する気持ちに右往左往する読後。実に興味深い。男性側の感想も是非知りたいと思った。

2019/05/12

タイ子

「人間は二度死ぬ。肉体が滅びた時と、みんなに忘れ去られた時だ」松田優作さんの言葉。父親が四国巡礼の帰途フェリーの上から身を投げた。自殺か事故か。真実を求めて次女は父親の残した手帳を頼りに同じ道を辿る。初めての巡礼の旅に癒される、そんなドキュメンタリー風なところが篠田さんらしい。40年の父の裏切り、物語は父親と愛人の回顧録をはさんで東日本大震災、巡礼の旅へと繋がる。登場人物たちの人生をそれぞれに切り取ることで、人間の身勝手さ、価値観、心の機微を上手く描写。タイトルに辿り着いた時、読み手の心にも光が射す。

2019/05/09

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