わが母なるロージー (文春文庫 ル 6-5)
わが母なるロージー (文春文庫 ル 6-5) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
『悲しみのイレーヌ』以下カミーユ・ヴェルーヴェン警部3部作の番外編。今度こそもう後はないらしい。そしてそのことが痛切に惜しまれる面白さ。一見したところでは冴えない犯人なのだが、その造型はなかなかに奥深い。実に手強い犯人なのである。その要求も相当に意想外なもの。しかも時間も切迫している。特殊班も敗退し、打つ手がない。そうした中で、今回もまたヴェルーヴェンの人間心理に迫る推理が見事。幕切れも予想を上回るものであった。抒情が揺曳し、悲哀の余韻を残しながら私たち読者はヴェルーヴェンとお別れである。
2020/11/30
starbro
ピエール・ルメートルは、邦訳された全作品を読んでいる作家です。バリバリの新作かと思いきや、6年前の作品でした。カミーユ・ヴェルーヴェンシリーズ番外編、時間軸からスピーディな展開でしたが、著者曰く0.5部作と言っている中篇なので、あまり読み応えはありません。
2019/10/03
しんごろ
ミステリー度より、サスペンス度が上回っていて面白かったです。ハラハラドキドキ、時にはイライラしながら、読みました。歪んだ愛に予測不能の展開で。欲を言えば、カミーユばかり目立つのは主役だから仕方ないとして、もうちょっとルイが多く登場してほしかったかな。いつか、きちんと時系列を追ってこのシリーズを再読したいですね。
2019/09/30
青乃108号
カミーユ警部シリーズ番外編。シリーズお馴染みのグロ描写はないが、またカミーユに再会出来て嬉しい。今回はいつどこで爆発するかわからない7発の爆弾に翻弄されるカミーユ達。物語の圧倒的な疾走感にワクワクしながら、あっと言う間に読み終えてしまった。母なるロージーと息子ジョンの悲しい運命。ラストシーンは映画のそれのように鮮やかで深く印象に残った。
2022/05/09
パトラッシュ
ルメートル作品では被害者・犯罪者から捜査する刑事までもが悲痛な目に遭ってきた。その強烈な暴力描写に延々付き合わされる長編を読むには体力と覚悟を求められたが、中編の本書には直接的な悲劇シーンはほとんどない。犯行直後に自首し謎めいた要求を突きつける犯人の動機について次々と矛盾する事実が判明し混乱するところは心理ミステリーとしても一級だ。壮絶の一語に尽きる結末を迎えると、なぜ彼はこんな人生を送らねばならなかったのか考えさせられてしまう。Mais la vie, c'est la vie, et la vie……
2019/10/11
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