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浮遊霊ブラジル (文春文庫 つ 21-3)

浮遊霊ブラジル (文春文庫 つ 21-3)

浮遊霊ブラジル (文春文庫 つ 21-3)

作家
津村記久子
出版社
文藝春秋
発売日
2020-01-04
ISBN
9784167914219
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浮遊霊ブラジル (文春文庫 つ 21-3) / 感想・レビュー

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こーた

変幻自在。いや変幻というにはあまりに変わり映えのしない、圧倒的日常ではあるし、自在というには制約が多すぎる(幽霊なのに瞬間移動できない、とか)。日常からはちょっとだけ浮いていて、非現実のほうはぐぐっと地に足がついている(地獄の鬼の鼻毛が出ている、とか)。この世に(あの世にも?)ありふれたほんのわずかな奇異を見逃さず、些事をときに冷徹なまでの筆致でつき離し描く。隙間に覗く可笑しさは暗くて陽気で、そのまなざしはどこか優しい。生と死にゲラゲラ笑って不謹慎をかんじさせず、莫迦莫迦しさのなかに人間の本質が顕れる。⇒

2021/02/28

さてさて

『葬式や何やがあった後、私は灰にされてしまった』など、当たり前のことのように書かれた文章が、よくよく考えると疑問符がつきまくる中に展開していくこの作品。ひたすらに真面目に徹した文体に、いや、ここ笑いどころでしょう?というツッコミ感のある設定が自然に組み込まれている摩訶不思議感。シュールといった安っぽい言葉で言い表せない独特な世界観の中に展開される七つのかっ飛んだ物語からなるこの作品。それこそが面白い、それこそが楽しみどころ、そしてそれこそが津村さんの何よりもの魅力!そう感じたインパクト最大級の作品でした。

2022/07/13

buchipanda3

さらりと軽妙にかわすような語り口がやっぱり良いなあと思えた短編集。ふふっ、くくっ、んむむ、てな感じでするすると読んでいった。どの話もゆるい訳じゃない。日常のありそうな光景を奇妙な双眼鏡を通して見つめているようで、そこにあるのは現実の切なさや理不尽さ。自分ではどうすることも出来ない事や上手く立ち回れない事が世の中にはたくさんあるということに改めて気付かされるが、でもそういうのを受け入れてちょいと抗ってみても良いんじゃないと思わされる感じも。にしても物語消費し過ぎはああなるのかあ。サッカー小ネタもいい感じ。

2022/04/11

(C17H26O4)

うまいなあ、津村さん。よいです、これ。人生の悲哀の中に隠れている可笑しさが、ここだよって存在感を示してくれるみたいで慰められる。淀んだ空気の中に一陣の風が吹き込んだようなすがすがしさがある。気がつけば流れ着いていた寂しい現状や、突発的な出来事による理不尽な死に、突飛な設定がプラスされていることで、ゆるっとまたはピリッといい感じなのだ。他人の道案内ばかりしてしまう運命の主人公。落ちた地獄が「物語消費しすぎ地獄」だった小説家。アラン諸島に行きたいのになかなかなかなか行けない浮遊霊。とか。

2020/07/22

kei302

短編が7作で、死とか霊とかが出てくるのが4作。 非現実感がにじまないところが津村記久子さんの凄さだと思う。『地獄』は鬼も含めてやたら事務的で冷静な感じが面白い。去年出た『サキの忘れ物』が自分の中では不完全燃焼。ツムラ世界観をもっと味わいたいと再読。「うどん屋のジェンダー、またはコルネさん」「アイトール・ベラスコの新しい妻」さらっと厳しいことが書いてあって好み。 解説は戌井昭人氏「おっさんが主人公の話が抜群に面白いのでこれ自分じゃないかと思う」解説もよかった。

2021/01/07

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