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悪人 (文春文庫 よ 19-8)

悪人 (文春文庫 よ 19-8)

悪人 (文春文庫 よ 19-8)

作家
吉田修一
出版社
文藝春秋
発売日
2021-06-08
ISBN
9784167917081
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悪人 (文春文庫 よ 19-8) / 感想・レビュー

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ふじさん

全体を覆う陰鬱なムードが漂い、途中何度も手が止まった。土木作業員の祐一は、出会い系サイトで知り合った佳乃が山奥で置き去りにされたのを助けようとするが、気持ちの行き違いから殺害する。祐一は、罪の意識に苛まれ救いを求め、出会い系サイトで知り合った光代と互いに惹かれ合い、逃避行の旅に出る。事件の加害者と被害者、その家族や友人。誰もが心に不安や苦しみを抱えながらも、現状を変えることが出来ず、耐えて生き続ける。登場人物の交差する様々な想いが巧みに描かれて心を打つ。最後の光代の淡々とした語り口が、哀しく切ない。 、

2023/06/03

Shun

出会い系サイトで知り合った保険外交員の女性を殺害し、山奥に遺棄した容疑で土木作業員の男が逮捕される。そして冒頭から話は遡り、この結果に至るまでの男女たちの関係や個人の境遇が描かれていきます。加害者と被害者は出会い系サイトを介して知り合った関係だが双方の家庭環境は対照的で片や愛情を受けて育った女性、もう一方は実母に捨てられた青年。出会い系がなければ交わらなかったであろう二つの人生が悲劇を生んだ事件だが、本作は複雑な人間関係とその人物たちを描くことにより、殺人を犯した人物も超え悪人とは何者かを問いかけている。

2022/04/16

majimakira

いったい誰が本当の悪人なのか、という気持ちもさることながら、どうしようもない現実を前に、無抵抗で不器用に、幼少期からの試練から引き続いて敢えて暗い道を選ぶかのように歩いて行ってしまう清水祐一の姿が、心を抉るほど苦しい。正に、夜の先にある、「また別の夜」に向かうかのようだ。そんな彼の最後の告白が、嘘にまみれた真の悪人のそれなのか、その「夜」に最後に差した微かな光のような、でも同時にこの上なく強い愛なのか、その答えを出し切らずに想像を巡らせることぐらいが、この物語の中の救いだと感じる。

2021/09/22

kieth文

人と人との巡り合わせ、それは儚い。その人の本質、性根が様々な人生を右往左往するだろうけれど、それに惑わされず生きることは難しい。特に祐一や光代の様に、存在を邪険にされたことのある者たちにとっては 常に孤独と向き合いそれを恐れて怯えて生きてきたから、、、でも何故こんな顛末になってしまったのか?“早く嘘を殺さないと、真実のほうが殺されそうで怖かった。“p.328 “何故、人を殺してはいけないの?“というフレーズを別の小説で読んだ。殺人が悪なのか?善悪の彼岸、、、

2022/06/06

こばゆみ

昔話題になってた本が新装版で出て改めて読むきっかけになるの有難いシリーズ。純朴な青年が罪を犯してしまう話は割と読んできたけど、この話は登場人物それぞれの視点で場面が切り替わっていくのがとても良い。そして罪を犯さない(犯してもバレない)「悪人」がたくさん出てくるのがしんどい。何が正しくて間違ってるのか混乱してしまう。。。

2021/06/27

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