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百花 (文春文庫 か 75-5)

百花 (文春文庫 か 75-5)

百花 (文春文庫 か 75-5)

作家
川村元気
出版社
文藝春秋
発売日
2021-07-07
ISBN
9784167917166
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百花 (文春文庫 か 75-5) / 感想・レビュー

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bunmei

認知症になった母と一人の息子との親子の絆を、切なく、愛おしく綴った、ハートフルな物語。自分の父も4年前に認知症を患い、最後は肺炎で亡くなった。今また母も老化が進み介護が必要になる中、本作が他人事でなく、現実味のある話として、胸が締め付けられる思いがあった。人はいつか老いて死んでいく。そんな摂理の中で、最後に蘇ってくるものはいったい何なのだろう?過去の苦しく悲しいシーンも、美しく楽しいものに変換するのも今ならできる。晩年に差し掛かってきた自分の人生も含め、老いとどう向き合うか、考えさせられる作品であった。

2023/10/02

いたろう

現在公開中の映画を観る前に再読。認知症を描いた小説というと、他に中島京子さんの「長いお別れ」などを思い浮かべるが、「長いお別れ」では、初期の認知症でのとんちんかんな行動でまず笑わせ、その後、症状が進んでから、家族が振り回される状況が、壮絶の一言であったのに対し、この小説では、笑いも壮絶という程の状況もなく、母と息子の関係が、ただただ切なく描かれる。母親の言う「半分の花火」とは何か。泉が思い出すラストがまた、何とも切ない。著者の川村さん自身が監督をしているこの映画で、この場面をどう映像化したのかが気になる。

2022/09/18

紫 綺

単行本にて読了。亡くなる前、両親とも認知症になった。母はまだ軽かったが父は重く、母の葬儀に来た息子を断片的にしか認識出来ず、離れて暮らした後悔をせずにいられなかった。最期に逢ったときのガラス玉のような無機質な父の眼を想い出し、泣く。身につまされた。

2022/09/28

ムーミン

自分はその時をどう迎えるのだろう。どんな心持ちで向き合えばいいのだろう。辛く悲しいけど、温かい作品でした。

2022/06/08

エドワード

人間は記憶でできている。何と心を震わすテーマだろう。レコード会社勤務の泉の母、シングルマザーの百合子に認知症の症状が表れる。妊娠中の妻と超多忙な仕事を抱え、百合子の介護に走り回る泉は、今日の日本人の典型だ。ピアノ教師の百合子は直近の記憶を失っても、ピアノ演奏は失わない。遠い日の幼い泉の記憶―百合子の一番大切な記憶は最後まで失わない。私も先年、両親を亡くした。その時に浮かんだのは、若い両親と幼い私の記憶だった。人間はそういうものなのだ。たとえ母と子の間に“事件”があったとしても。温かい余韻が残る物語だった。

2022/09/26

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