色仏 (文春文庫 は 55-2)
色仏 (文春文庫 は 55-2) / 感想・レビュー
桜もち 太郎
官能時代小説というがもうここまで来たら官能の冠を外してもいいと思う。ペリー来航の時だから1853年あたりの物語。とにかく真砂という女の情念がすさまじい。猟奇的でさえある。そんな女の背には十一面観音像が彫られている。その見事さに打ちのめされた主人公の烏(からす)という男の物語だ。木彫りで観音像を彫りたい、この世で最も艶めかしく、全ての男がひれ伏すような観音像を。しかし自分には何かが足りないと感じる烏。27歳にして女を知らない致命的な弱点があったのだ。ただやればいいものではない。→
2021/10/18
春の夕
著者初の官能時代小説であり、私自身にとっても初めての官能作品だった。この物語の性愛描写はその躰を生きる証憑とでもいうように、本能と魂の相牴牾するものに焦点をあてて描かれているから、果てなく無様でいとおしくなった。
2022/01/27
まめの助
★★★☆☆子供の頃に見た観音像に魅了され仏師を目指す男と、その観音様を愛する男の手で背中に刻まれた女のお話。生活のため依頼された女体を彫る男が主人公なのだが、途中から愛憎紙一重を体現する女、真砂に気持ちが移っていく。すべてを許し受け入れてくれる観音様を背負った鬼の真砂。男を愛するがゆえの女の情念がさらにパワーアップしていて、壮絶な程。ここまで人を愛せるのは羨ましいと思う反面、もはや地獄。極楽ではなく、地獄にいる仏によって苦しみから救われて欲しい。
2021/11/25
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