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犬 (文芸書)

犬 (文芸書)

犬 (文芸書)

作家
赤松利市
出版社
徳間書店
発売日
2019-09-28
ISBN
9784198649302
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「犬 (文芸書)」のおすすめレビュー

63歳トランスジェンダー、老いと金と男に悩み抜き狂乱の旅へ――赤松利市『犬』

『犬』(赤松利市/徳間書店)

「犬」という単語に、あなたはどんなイメージを思い浮かべるだろう? 赤松利市さんの『犬』(徳間書店)を読むと、今までのあなたの「犬」のイメージは大きく変わることになるかもしれない。

 2018年、『藻屑蟹』(徳間書店)で第1回大藪春彦新人賞を受賞した赤松さんは、暴力や金の世界を巧みに描く、鬼才の作家。過去には、実話に基づいた私小説『ボダ子』(新潮社)で自身の壮絶な過去を公表。経験してきた人生の濃さに目頭が熱くなり、作家という枠を超えて、赤松利市という人物に興味が湧く作品でもある。

 また、今年7月に発刊された『純子』(双葉社)も強烈なインパクトを残す小説だ。下肥汲みの家に生まれた純子という美少女を主人公にして繰り広げられる、“臭う”ファンタジーに、読者はド肝を抜かれた。

 赤松さんは、これまでに見たことがない世界を本の中に次々と生み出す。この『犬』もそうだ。まず、目に飛び込んでくるのは帯に記された「嬲り、嬲られ、愛に死ね!」という暴力的なフレーズ。今回、鬼才が見せてくれるのは狂乱の疾走劇だ。

■老後資金1000万をめぐる、愛と…

2019/11/3

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話題の作家を生み出す大藪春彦新人賞! 赤松利市「後輩と潰し合いがしたい」×西尾潤「罪を犯してしまう、その気持ちが知りたい」

 実体験をベースにしたという衝撃作『ボダ子』をはじめ、『鯖』『純子』『らんちう』と、実にさまざまな話題作を生み出し続けている作家・赤松利市さん。9月末には、セクシュアルマイノリティの“老い”をテーマにした『犬』を上梓し、その過激な内容がまたしても物議を醸している。

 そんな赤松さんがデビューするきっかけとなったのは、2018年に創設された「大藪春彦新人賞」だ。応募作『藻屑蟹』は原発の除染作業員を主人公とした物語であり、淡々とした語り口で、人間の欲望や醜さを描ききった。以降の活躍ぶりは言わずもがな。デビューしてまだ2年ほどにもかかわらず、ハイスピードで次々と作品を生み出している。

 そして、同賞から二人目の作家が誕生した。それが『愚か者の身分』でデビューを果たしたばかりの西尾潤さんである。

 本作のテーマとなっているのは、「戸籍ビジネス」。社会の最下層で蠢く半グレたちを主人公に、彼らの闇や一筋の希望を描いている。選考委員からは「突き抜けた何かがある」と評価された西尾さん。デビューしたばかりだが、赤松さんのように文壇で活躍することは想像に難くない。

 そこ…

2019/10/26

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犬 (文芸書) / 感想・レビュー

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鉄之助

主人公は60代と20代、二人のトランスジェンダーとヤクザまがいの前科者。舞台は”座裏”のプレミア焼酎スナック。座裏とは、大坂・難波の新歌舞伎座の裏通りのこと。この設定で、面白くないはずはない、と思って手に取る。予想通りワクワクする展開だった。老後の資金1000万円を巡る、ハードボイルドタッチの逃走劇にハラハラ。後半は激しい暴力・ハードなセックス描写に目が行きがちだが、私には、本当の意味での安息することが出来る”居場所探し”の物語に思えた。「ホームレス作家」赤松利市ワールドを、今回も堪能した。

2023/07/09

しんごろ

老後のトランスジェンダーの話だと聞いたけど、思ったのとちがーう。バイオレンスだよ。バイオレンス!しかも描写がエグい。しんどかった~。ひでえ話だけど、桜と沙希の絆?愛?が深かったのだけは救われたかな。一瞬だけウルッとしたシーンもあったけど、それにしても、イヤになるほどエグいバイオレンス描写やエログロ描写で読むのに、加えて、あっけないラストに、なんじゃこりゃ~の松田優作もビックリだわ。もう著者の作品はお腹いっぱいだから、読まないな。ただ読ませる力はすごい。

2019/11/24

しんたろー

赤松さんの強烈な世界に引きずり込まれて6作目…本作もエログロ描写は多いし、想像するのも痛々しいヴァイオレンス描写もあって、まるで激辛料理ような小説。とは言え、主人公の63歳ニューハーフ・桜の揺れる乙女心はイライラしつつも理解できるし、老いや孤独への恐怖は身につまされる。桜を慕う24歳ニューハーフ・沙希のキャラも素敵で、二人を応援しつつ先行きを案じてハラハラドキドキ!読む手が止まらない。ラストが簡潔すぎて尻切れトンボ感が残念…数ページで良いので、桜や沙希を登場させるエピローグを創って余韻を高めて欲しかった。

2019/12/06

いつでも母さん

嬲り、嬲られ・・帯が私を離さない(笑)そんなにいいか?安藤が。が正直なところ。甘いあまいよ死ぬところだったんだよ・・そうか、死をも凌駕するのかこの性愛は。まさしく狂乱の疾走劇。所詮男と女のことだもの当事者にしかわからない感情なのだろう。女の幸せって何だろうとそんなことを思った。赤松さんがこちらの嗜好を抉るように突きつける。繋いでいるのは愛なのか?ズタズタになっても縋り付く・・そんな記憶があるか?これでもかと引っ張ってプツンと切れるのが上手い。この放り出された読後感は何とも言えない。

2019/10/25

yoshida

赤松利市さんの作品でも好みは別れる作品だろう。私も途中で読むのを止めようとした。何とか読了。トランスジェンダーに老後の不安を加味した、愛憎劇だと思う。主人公の桜は大阪でバーを経営。昔の男の安藤が現れ金を無心する。もう胡散臭い。従業員の沙希は、母と慕う桜に安藤は金目当てと警告するが聞き入れられず。沙希はある行動に出る。とにかく安藤が酷すぎる。暴力、性格、金銭への執着、全てが酷い。安藤の性的な内容も含めた暴力が読む気持ちを折る。これまでの赤松利市さんの作品に比べれば、内容は浅いと思う。厳しい読書時間だった。

2019/12/15

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