フェイクと憎悪 : 歪むメディアと民主主義
ジャンル
「フェイクと憎悪 : 歪むメディアと民主主義」のおすすめレビュー
フェイクニュースやヘイトはどのようにして生まれ、広がるのか?
『フェイクと憎悪:歪むメディアと民主主義』(永田浩三/大月書店)
2018年3月、放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送人権委員会は、MXテレビで放送されていた『ニュース女子』という番組において、在日コリアン女性の辛淑玉さんの名誉を棄損する人権侵害があったことを認めた。そのうえで「再発防止に努力するよう勧告した」と発表した。
同番組は2017年1月、沖縄県内の米軍ヘリコプター離着陸帯建設に反対する人たちを「テロリストみたい」などとレポート形式で評し、辛さんを「黒幕」と名指しする内容の番組を放送。辛さんはこれらに対して、BPOに申し立てをしていた。
内容は事実と異なるにもかかわらず放送・報道されてしまう。このようないわゆる「フェイクニュース」の犠牲者は、辛さんに限らない。ではなぜ、メディアはフェイクを伝えてしまうのか。その疑問解決の一端になりそうなのが、武蔵大学教授で元NHKプロデューサーの永田浩三さんがまとめた『フェイクと憎悪 歪むメディアと民主主義』(大月書店)だ。
同書には精神科医の香山リカさんや調査報道NPO「ニュースのタネ」編集長の立…
2018/7/18
全文を読むおすすめレビューをもっと見る
フェイクと憎悪 : 歪むメディアと民主主義 / 感想・レビュー
樋口佳之
魯迅は言っている。筆で書いた噓は、血で書いた真実を隠すことはできないと。/いかに被害者の声に頼らないで、メディアは差別と極右の危険性を報道できるのか。被害者の声をメディアが取り上げる重要性は疑うまでもない。だが問題は、日本のメディアが、被害者の声に頼らなければ、ほとんど差別を批判できない点
2018/06/24
冬佳彰
どーしよーもねえな、この国は、と思っちゃうな、こうした本を読んでいると。政権のほうは置いといて(置いておけねえが)、目先の利益で隣国を貶めたりする商売を「仕方ない」とする、○○○な心性などがね。こういう時に思い出すのは、『自分の仕事をつくる』(西村佳哲)に書かれていた、こういうレベルで良いだろうという心根で行われた仕事は、受け手も与える側も、ボディブローのようにじわじわと損なってゆく、という話だ。俺も会社員人生をほぼ一巡して、そう思う。だからヘイトを書店に置くロジックは、甘いと思ってしまう。日本的だな。
2019/11/17
WaterDragon
とても良い本に出会いました。 なぜ、メーカー(一部の出版社や新聞社)は、フェイクやヘイトを発信するのか。 その答えは、「売れるから」あるいは「PVが稼げるから」といったある意味では〝単純な〟〝資本主義的な〟ものです(そして講読者はそれを拡散し、結果、社会が分断されるわけです)。 本書が指摘しているように、メディア(出版社も含め)がヘイトやフェイクにたいして、どういった構えで発信していくのかがとても重要だと感じます。 日本が、〝反レイシズム0.0〟の位置にあることに、憤りを感じます。
2018/06/29
futomi
13人の書き手(インタビューを含む)が、フェイクニュース、ヘイトスピーチ、ジャーナリズムなどを考察する。学ぶことの多い読書だった。 驚いたことは232ページ 日本には、包括的な差別禁止条約がないということだ。「それは差別だ!」と批判する基準を持たないということで、「なんだかおかしいな、悔しいな」という思いが個人的な感覚の相違だと無視されてしまうことだ。 262ページ「ジャーナリズムは、声をあげられない人のた めにある」がとても心強い。
2018/10/19
umeko_yoko
ものすごい考えすぎてめちゃくちゃ読むのに時間がかかりました。わたしの浅い知識や感覚で議論をする気はまったくありませんが、なんか最近の日本おかしいよね?というのが、この本を読んで「憎悪」に通じる気持ち悪さだったのかなと。 「正しいことをコツコツ訴えても数字が取れない」「刺激の強いものほど拡散される」「日本が間違ってなかったとするためには次の敵(中国・韓国)が必要だった」など、少し腑に落ちました。 最終的にはやはり「人としてどうか」、ただそれはあくまでも「自分にとって」であってもだけど、それしかないのかなと。
2018/10/05
感想・レビューをもっと見る