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逆さに吊るされた男

逆さに吊るされた男

逆さに吊るされた男

作家
田口ランディ
出版社
河出書房新社
発売日
2017-11-11
ISBN
9784309024820
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「逆さに吊るされた男」のおすすめレビュー

オウム真理教とは何だったのか。地下鉄サリン実行犯・死刑囚Yとの交流の末に辿り着いた真実

『逆さに吊るされた男』(田口ランディ/河出書房新社)  オウム真理教とは、地下鉄サリン事件とは、一体何だったのか。1995年(平成7年)3月20日、阪神淡路大震災から約2か月後のことである。午前8時頃、通勤ラッシュの営団地下鉄(現東京メトロ)の車両内で、化学兵器として使用される神経ガス「サリン」が撒かれた。死者は13人、負傷者は約6300人といわれている。東京消防庁が所有するスーパーアンビュラスという超大型の救急車が出動し、担架で次々と搬送されるサラリーマン。当該車両に入り除染をする、ガスマスクを着けた陸上自衛隊員。今もなお後遺症に苦しむ被害者。どれも日本の歴史に深く刻み込まれた、忘れてはならない凄惨な光景だ。

 この凄惨なテロ事件を、私は“歴史”として学んできた。事件当日、私はまだ言葉も知らぬ0歳児だった。バブル崩壊ののち、阪神淡路大震災、地下鉄サリンと、完全に元気を失った後の日本とともに歳を重ねてきた世代だ。「頭のおかしな集団が、頭のおかしな動機でテロを起こした。実行犯は狂気の殺人マシンだった。」本当にそうなのか。それだけで片付けて、風化さ…

2018/1/11

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逆さに吊るされた男 / 感想・レビュー

powerd by 読書メーター

ケンイチミズバ

新興宗教に引っ掛かる人には共通項がある。アムウエイみたいなビジネスも極端な断捨離、変な右も左もみな裾野の広い新興宗教の延長線上にあると私は思っている。キリストも親鸞にも天夢の啓示があったそうだ。凡人にも神が降りてきたはよくあることだ。ただの夢や自然現象を思い込みや勘違いかもしれないと普通なら終わらせる。自分を神だとか教祖だと名乗るいかがわしさが私は大嫌いだ。大衆を信じ込ませる屁理屈の上手さは政治も同じだが。真実は知らない。カルトの暴走くらいにしか。殺人を勝手な解釈で正当化するのはジハードと同じテロと同じ。

2018/01/15

M

始めにノンフィクションなのかフィクションなのかごっちゃなのか分からずに読み始めたのですが、読み終えてもなんなのか分からずじまい。著者がオウム(麻原)に対して徐々に主観的で感情的になってきて妄想めいてきて、読者はおいてきぼりで煙に巻かれてフェイドアウト。物語でも構わないから責任持ってまとめなさいよ。(笑)

2018/10/05

Tsuyoshi

主人公である女性作家が地下鉄サリン事件で死刑囚となったYとの手紙や接見でのやり取りを通してオウム真理教やサリン事件など一連の出来事に迫っていく話。事件前に引きこもりの兄の心の闇に触れているだけに主人公がオウム真理教の内面世界や引き寄せられた人々に興味が湧いていったのも自然な事かもしれない。オウムだけでなく他の宗教や陸軍、原爆にも触れられており、自らが持ち得ないエネルギーへの渇望が人々を狂気に駆り立てていく根底にあるのかなと思った。

2018/01/22

ネギっ子gen

オウム真理教の話だが、底流に“お兄様”の存在があり、ランディさんは、まだここをしっかり抱きかかえておられる、と嬉しかった。題名、装幀共に良し。【共感箇所】<一事が万事、こんな調子。ひらめくの。あー、そうか!って。このひらめきは魅力的で、抗しがたい力をもっている。オウム真理教との心理的な共鳴が起こってしまう。危険なことだとわかっていても>。 私が主人公同様に躓いた、板橋興宗禅師の言葉。「反省とは事件を忘れてしまうことだ」これぞ禅僧の公案。エゴに囚われている者への「喝」。とは頭で理解していてもどうにも腑に……

2019/11/21

キク

元オウム幹部だった故林泰雄と長年交流していた田口ランディによる、ノンフィクションノベル。交流を通して徐々にオウムや麻原に引き寄せられていく田口。その危うさは、「なんでこんな優秀な人達が、麻原みたいな汚いオジさんに惹きつけられたんだ?」という当時の世間の疑問でもある。麻原が真実を語らないまま死刑が執行された。でも詐欺師の教祖と危険な教団という事で問題を終わらせては絶対にいけなかった。書かないでくれという林を振り切り出版した田口は、本当に業の深い人だけど、だからこそコンセントという小説を書けたんだとも思う。

2021/02/10

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