KADOKAWA Group

Facebook Twitter LINE はてブ Instagram Pinterest

おらおらでひとりいぐも

おらおらでひとりいぐも

おらおらでひとりいぐも

作家
若竹千佐子
出版社
河出書房新社
発売日
2017-11-16
ISBN
9784309026374
amazonで購入する

「おらおらでひとりいぐも」のおすすめレビュー

【芥川賞受賞作】63歳新人が織りなす玄冬小説『おらおらでひとりいぐも』

『おらおらでひとりいぐも』(若竹千佐子/河出書房新社) 第158回芥川賞を受賞した『おらおらでひとりいぐも』(若竹千佐子/河出書房新社)は、63歳の新人作家が織りなす「老い」を生きるための玄冬小説として現在大いに注目を集めている。私は読後この記事を執筆するにあたり、「これほど素晴らしい作品のレビュー記事を書くとなると、やはり肩に力が入ってしまうものだな」と、ある種の重圧を感じてしまった。しかしまたもう一方で、本稿を通してこの作品をご紹介できることに大きな喜びを感じている。

驚くほどの内面探索の塊。というのが本作に対する素直な第一印象。40年来住み慣れた都市近郊の新興住宅地で、ひとり茶をすすり、ねずみの音に耳をすます桃子さん。御年74。桃子さんの中には、東北弁丸出しの声がいくつも湧きあがる。「あいやぁ、おらの頭このごろ、なんぼがおがしくなってきたんでねべが」「どうすっぺぇ、この先ひとりで、何如(なんじょ)にすべがぁ」…。

「プレ婆さん」を自称する63歳の作家、若竹千佐子氏の、文芸賞受賞のデビュー作である本書。青春小説の対局、玄冬小説の金字塔であると感…

2018/3/10

全文を読む

63歳処女作で芥川賞受賞!『おらおらでひとりいぐも』を読書家はどう読んだ?

『おらおらでひとりいぐも』(若竹千佐子/河出書房新社)

 青春小説の対極に位置する「玄冬小説」が、第158回芥川賞を受賞した。『おらおらでひとりいぐも』は63歳にして小説家デビューを果たした若竹千佐子氏の処女作。夫に先立たれ、子どもたちともうまく関係を結べないと感じている74歳の桃子さんが東北弁を武器に「老い」と向き合っていくこの物語は、「歳をとるのは悪いことばかりではない」と思える感動作だ。

 桃子さんは、結婚を3日後に控えた24歳の秋、東京オリンピックのファンファーレに押し出されるように、故郷を飛び出した。住み込みでアルバイトをし、周造と出会い、結婚し、二児をもうけ、そして、子育てが終わったと思ったら、夫はあっけなく死んでいった。

「この先一人でどやって暮らす。こまったぁどうすんべぇ」。74歳になった桃子さんは40年来住み慣れた都市近郊の新興住宅で、ひとりお茶をすすりながら、過去を思い出し、これからに思いを馳せ、時に幻想に身を投じていく…。捨てた故郷、疎遠になった息子と娘、亡き夫への愛。震えるような悲しみと孤独の果てに、桃子さんが辿り着いたものと…

2018/2/24

全文を読む

おすすめレビューをもっと見る

「おらおらでひとりいぐも」の関連記事

第158回芥川賞は石井遊佳の『百年泥』と若竹千佐子の『おらおらでひとりいぐも』に、直木賞は門井慶喜の『銀河鉄道の父』に決定!

 第158回芥川賞・直木賞(日本文学振興会主催)が発表された。選考会は16日、東京・築地の新喜楽で開かれ、「芥川賞」は石井遊佳の『百年泥』と若竹千佐子の『おらおらでひとりいぐも』に、「直木賞」は門井慶喜の『銀河鉄道の父』に決定した。

【第158回芥川賞受賞作品】

2018/1/16

全文を読む

100万部突破の『漫画 君たちはどう生きるか』が総合1位! 原作小説も30万部に。1月10日調べ「トーハン 週間ベストセラー」Pick UP!

 1月10日調べの「トーハン 週間ベストセラー」が発表されました。各ジャンルから注目の本をピックアップしてご紹介します。

 総合1位には『漫画 君たちはどう生きるか』(吉野源三郎:原作、羽賀翔一: 画/マガジンハウス)がランクイン。同書の原作は1937年に児童文学者の吉野源三郎が発表、戦前の日本を舞台に、15歳の少年・コペル君が、叔父さんとの対話の中から、人間としてあるべき姿を考えていく物語です。昨年8月に漫画化された同書が発売され、幅広い年齢層から支持を得ています。売り上げを伸ばして増刷が相次ぎ、1月10日の重版で100万部に達することが発表されました。トーハンベストセラーでも10月31日調べ以降、10週連続でランクインし、そのうち7週で1位となっています。今週の総合9位には、漫画版と同時刊行された原作小説の新装版が入り、こちらも30万部に達しています。80年前の名著が、現代の人の心にも深く訴えかけています。

 今週の総合ランキングには、3位『ざんねんないきもの事典』、6位『続ざんねんないきもの事典』(共に今泉忠明:監修/高橋書店)、7位『ポケット…

2018/1/12

全文を読む

関連記事をもっと見る

おらおらでひとりいぐも / 感想・レビュー

powerd by 読書メーター

ヴェネツィア

作者より12歳年長の桃子さんを措定し、共通語で語る桃子さんと、東北弁※で語りかける彼女の内声とのダイアローグといった構造を持つ。その内声は、時には桃子さんの幼少時の回想であったり、潜在意識が顔を出したものであったりする。なお、先天的な左利きを右利きに矯正するのは、その身体表現である。また、最愛の夫、周造の死は桃子さんにとっては大いなる哀しみであると同時に「ひとりいぐ」ことを促す喜びでもあると、ここでも両義的な意味を付与されていた。畢竟、この小説はダイアローグの形式をとりつつも、作者自身のモノローグである。

2018/02/25

鉄之助

呼吸するようにスルスル読めた。それは、東北弁がちょうど良く混じった文体だったから。故に、この本をより楽しむためには音読するに限る!とも思った。東北弁に対する表現も面白かった。「好ぎなのに好ぎと言えないもどかしさ、嫌いなのにやんだと言えないじれったさ みでな~」。わかる同感、同感! 極めつけは、方言とは「小腸の柔毛突起」。心の内を見事に表現、感服した。「上野駅に降りたったときのあの心細さ、それでいながら何とも言えない開放感」。私も、同様のシーンを身に染みて感じた世代だ。若竹さん、名作をありがとう。

2021/10/17

starbro

第158回芥川賞候補になって直ぐ図書館に予約したので、比較的早く読めました。インパクトのあるタイトルと老齢の域に達する女性の心情が活き活きと描写されていて、芥川賞らしい作品です。次回作にも期待したいですが、2作目以降売れずに消えて行く作家にはならないようお願いします。

2018/01/27

zero1

孤独と回想は現代老人の常か。24歳で結婚が決まっていた桃子は逃げるように東北を出て東京へ。子ども二人を育て夫とは死別。74歳の彼女は娘からの電話を待つ独居老人。モノローグではなく語り手がいて標準語で話す一方、桃子は東北弁。思考が飛ぶのと同様、これは間違いなく技巧で芥川賞の選考委員もこの点について述べている(後述)。方言は「壬生義士伝」(浅田)を思い出す。人としての年輪と多言語の妙は流石。芥川賞作品は売れないことが多いものの、この作品は別。「日の名残り」(イシグロ)とは違う老境の描き方が共感を呼んだか。

2020/04/07

ウッディ

夫に先立たれ、子供たちも自分の元から離れ、一人暮らしをする桃子さん。話し相手もおらず、一人で会話する時、なぜか昔に捨てた故郷の東北弁、そんな孤独な老女の心の叫びを描いた芥川賞受賞作。短いにも関わらず、なかなか読み進めることができなかった。馴染みのない東北弁は、すんなりと頭に入って来ず、著者が伝えたことがわからなかった。ただ、孤独であるという寂しい雰囲気、脈略なく頭に浮かぶ過去の記憶の切なさは、心に刺さった。ともあれ、芥川賞作品とは相性が悪いです。

2019/06/08

感想・レビューをもっと見る