KADOKAWA Group

Facebook Twitter LINE はてブ Instagram Pinterest

いつか深い穴に落ちるまで

いつか深い穴に落ちるまで

いつか深い穴に落ちるまで

作家
山野辺太郎
出版社
河出書房新社
発売日
2018-11-15
ISBN
9784309027616
amazonで購入する Kindle版を購入する

いつか深い穴に落ちるまで / 感想・レビュー

powerd by 読書メーター

trazom

斎藤美奈子さんの「これぞ文科系の土木小説!」とのコピーに惹かれて読むが、ちょっと違う感じ。地面に鉛直の穴をあけて「日本―ブラジル間直線ルート開発」という秘密プロジェクトが実現する物語。全くもって荒唐無稽な小説なのだが、現代社会に照らして読むと意味深である。水平の穴(リニア新幹線)のバカさ加減は、鉛直の穴とどう違うのだろうか。掘った穴をどう使うかは後から考えるとして、建設だけが進捗する公共事業。二階級特進のエサで、穴に飛び込む危険を冒す社員を指名する会社の冷酷。滑稽さの中に潜むブラックユーモアにハッとする。

2023/06/14

Willie the Wildcat

底の見えない穴。目的も紆余曲折する中での大義。ムリ・ムダ・ムラの先に見えるモノとは何か?私自身のお過去を告白すれば、「穴を掘り続けたらどこに辿り着くだろう?」って、幼稚園くらいに砂場で試した記憶アリ。無論、成果無し。でも科学じゃないんだよなぁ。一方、主人公の一途さは、一つ間違うと、先の大戦下の集団主義の匂いともなる。示唆する”穴”の数々。但し、逃げる、隠れるためといった後ろ向きな思考から、環境問題改善など前向きな思考への転換が、骨格という感。故の「満天の星」ではなかろうか。意味深な終わり方だなぁー。

2019/04/14

キク

東大文学部から同大学院人文系修士までいったエリート文系が書いた「いつか深い穴に落ちるまで」という小説の「深い穴」って絶望の暗喩だと、普通思いますよね?少なくても、僕は思いました。でも、終戦直後から続く極秘国家プロジェクトである「日本ーブラジル間・直線ルート開発計画」という地球に竪穴を建設する、ゼネコン的発想のタイトルだった。主人公はプロジェクトの広報担当。どことなくシュールで、クスッと笑えるのに、なぜかそこはかとなく切ない。文学的な深みはないけど、バカリのコントのような上品な味わいがあって、わりと好きです

2023/04/04

オーウェン

突拍子もないアイデアである。 日本の反対側から穴を掘ればブラジルに辿り着ける。 理由は飛行機で行くより速いから。 もちろんこんなことできるわけがないのだが、これはある種のファンタジーとして捉えることもできる。 山本から引き継いだ鈴木が事業を進めていき、遂には穴が貫通する。 ラストの描写はちょっと逃げのようにも思うが、こういうぶっ飛んだ中身のお仕事小説というのも有りかなと思う。

2022/01/13

えりか

「ブラジルの人、聞こえますか~?」日本とブラジルの両方から穴を掘り貫通させるという機密プロジェクトが、戦後まもなくから現代にかけて進められていたことをご存知だろうか。時代の流れとともに消えたもの、誕生したものがあるなかで、この事業はひっそりと続けられていたのだ。これは、それに人生を捧げた男の物語である。ありえないでしょと、つっこんではいけない。むしろ不可能を大真面目に取り組む姿に笑ってしまう。ありえないことにリアリティをもたせるという、小説の面白さや可能性に気づく。だから小説って面白いって思わせてくれる。

2018/11/18

感想・レビューをもっと見る