絶望書店: 夢をあきらめた9人が出会った物語
「絶望書店: 夢をあきらめた9人が出会った物語」のおすすめレビュー
夢の“あきらめ方”教えます。今、絶望の淵にいるあなたに出会ってほしい物語
『絶望書店 夢をあきらめた9人が出会った物語』(頭木弘樹:編/河出書房新社)
夢や希望というのは、日々の道しるべとなりうる。しかし、本当に心が折れかけているとき、まぶし過ぎる言葉はかえってプレッシャーとなり、よけいにふさぎこんでしまうきっかけになってしまうかもしれない。
書店でも「夢をかなえる本」や「夢をあきらめない本」というのはよく見かけるものの、ときには“あきらめる”という選択肢も必要ではないか。そう訴えかけてくれるのは、著名人たちが著した「夢のあきらめ方」にまつわる物語をまとめたアンソロジー『絶望書店 夢をあきらめた9人が出会った物語』(頭木弘樹:編/河出書房新社)だ。
■「千人に一人しかなれないものを目指せば、九九九人は挫折する」という真理
文学作品やマンガ、歌詞といったさまざまなジャンルから、著者みずからが“夢のあきらめ方”について表現された作品を選び紹介している本書。あとがきでは各作品の解説も綴られているが、そもそもの前提として著者は「夢をあきらめるな」という言葉が溢れている世の中に対して、やんわりと疑問を投げかける。
例えば、よく使…
2019/3/15
全文を読むおすすめレビューをもっと見る
絶望書店: 夢をあきらめた9人が出会った物語 / 感想・レビュー
モルク
「夢をあきらめた9人が出会った物語」悲観的ではなく心にしみるものが多かった。難聴に悩むベートーベンの手紙から、彼は決して人嫌い、気むずかしく偏屈な人ではなく、音楽家であるが故に難聴を隠したいという思いからあえて人を避けていたことがわかる。彼の苦悩の深さが苦しい。それからFCバルセロナの下部チームにスカウトされた少年の「肉屋の消えない憂鬱」同時期に入ったメッシ少年らとの実力の差、故郷での期待の狭間で悩み夢が重荷になることを知る。と、いろいろバラエティに富んだ内容なのでいろんな読み手に対応できると思う。
2019/06/24
抹茶モナカ
「夢をあきらめる」時に、心に響くような文芸作品を集めたアンソロジー。いろいろな方が推薦したものを集めた本なのもあり、バラエティーに富んでいる。「絶望」と銘打っているので、太宰系の話の寄せ集めかと思っていたのだけれど、意外にほのかに心に響く、やんわり考えさせるような話が多かった。編者の嗜好に偏らないようにか、第2弾のようでネタ切れによるものか、いろいろな推薦者の審美眼から集められた本で、読者の多様な落ち込み具合の度合いに対応する構成。活字も大きく、読みやすい文章が多かったので、読むのが負担にならなかった。
2019/05/30
Natsuko
夢を持つことの大事さが語られ、叶えなくては意味がないとも言われがちだが、本作は「夢の諦め方」に関する本。著者は20代30代療養生活をしていたのこと、だからこそこの発想なのだろう。ベートーベンやスポーツ選手など9人の打ちひしがれるような悔しさや絶望。書店主挨拶、手書き文字のイントロ、過去の自分と一堂に会する藤子・F・不二雄さん作「パラレル同窓会」がとってもいい。大した夢を持ったこともなく、日常の些細なことで一喜一憂している自分は絶望を経験したとはいえずアップダウンのない人生だが、それはそれで良しとしよう。
2021/01/16
れっつ
夢を持って。夢をあきらめないで。頑張れば夢はきっと叶う。世の中はそんな歌や言葉で溢れている。しかしだ。夢と希望を持って行動していても、そこに悩みや葛藤はつきもので、果ては努力しても報われないことも多々あるのが現実だ。そんな現実に直面してなお、自分として生きていくために、この本が教えてくれること…。この世界には、絶望し夢をあきらめた人について書かれた書物が溢れている、ということ。9つの作品抜粋と番外編からなるアンソロジー。最後の韓国文学"アジの味"は、病気を、自分が変わる起点とした人の話で深く心に沁みた…。
2020/07/23
空猫
副題通り「夢をあきらめた」物語集。…生きる悲しみとは…山田太一サン『断念すること』、…必死で育て上げた子供に疎まれた孤独な老女の想いとは…連城三紀彦サン『紅き唇』、…言葉で伝えるとは、国破れて山河ありとは…クォン・ヨソンサン『アジの味』等が好み。物語の前の編者の口上も、最後の解説も良いスパイスになってたし、哀しいけれど『絶望図書館』よりカタルシスがある話ばかりで良かった。
2019/12/03
感想・レビューをもっと見る