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約束された移動

約束された移動

約束された移動

作家
小川洋子
出版社
河出書房新社
発売日
2019-11-12
ISBN
9784309028361
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約束された移動 / 感想・レビュー

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ヴェネツィア

表題作を含む6つの短篇を収録。そのうち最後の2篇は他のアンソロジーと重複。また、巻頭の2篇は手法を幾分異にするものの、全体を貫流するのは透徹したまでの静謐さだ。主人公たちはいずれも、動きが少ないし、感情の振幅もまた少なくても表面上は少ないように見える。そして、これまでの小川作品に見られたような超越したものとの接点も、一見したところでは見当たらない。さらに奥深くイメージは沈潜してゆくのである。プロットも可能な限りはそぎ落とされている。最も小説らしい小説―例えばフローベールのそれのように純度が高い―だろうか。

2020/04/07

starbro

小川 洋子は、新作中心に読んでいる作家です。小川 洋子ワールド全開の短編集ですが、今回はあまり入り込めませんでした。オススメは、表題作『約束された移動』& 絶対憶えたくない”ママの大叔父さんのお嫁さんの弟が養子に行った先の末の妹”が主人公の『元迷子係の黒目』です。

2019/12/07

さてさて

六つの短編から構成されたこの作品。書名にある通り”移動する”ということに焦点を当てた短編集です。『働いている人を描写するときがいちばん、その人の本質がよくわかります』と語る小川さん。普段意識することの少ない職業に就く人たちに光を当てるこの作品。『そこにいるけど、いないも同じ』という人たちの姿を通じて、人と人との繋がりというものを考えるこの物語。六つの短編に描き出されるふわっとした優しさを感じる物語の中に静かに浮かび上がる人とモノの美しさを感じた、今まで読んだ小川さんの短編集の中で最も心魅かれた作品でした。

2021/04/26

旅するランナー

ホテルの客室係、ダイアナ妃のドレスを真似て手作りして着る元エスカレーター補助員、ママの大叔父さんのお嫁さんの弟が養子に行った先の末の妹(元デパートの迷子係)、元編み物の先生、託児所の園長、大作家の通訳、そんな慎ましやかな女性たちの秘めた美点が微笑ましい6短編。褒めてもらえない誰かを励ます資格があるのは、同じく褒めてもらえない役目を負っている誰かなのです。さあ、ページから立ち上がってくる言葉の匂いをかいでみましょう。えっ、優しい香りがするって。わかります、わかりますよ。

2020/03/24

ケンイチミズバ

いつもながら、翻訳された洋書を読んでいるようだった。ささやかで人畜無害な変人。ハリウッドスターやダイアナ妃への熱い執着、いわゆるストーカーだが、相手は雲の上か故人なので、害がない。自分が知らない誰かがどこかで自分に深い興味を抱き続けているとしたら。客室係は清掃とベッドメイキングの途中でセレブ御用達の部屋から備品の本が一冊ずつ無くなることに気付く。それを支配人に告げることはしない。無くなったのと同じ本を買い求め家で読書にふける。つまり、彼が読んだものをストーキングする。読書メーターにもそんな人、いるのかも。

2019/12/02

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