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大阪

大阪

大阪

作家
岸政彦
柴崎友香
出版社
河出書房新社
発売日
2021-01-27
ISBN
9784309029375
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「大阪」のおすすめレビュー

大阪に暮らしたふたり、柴崎友香と岸政彦のあの街の魅力とは? 著者の記憶を追体験できるエッセイ

『大阪』(柴崎友香、岸政彦/河出書房新社)

 2005年まで大阪に住んでいた小説家の柴崎友香氏と、大学入学以来大阪に住み続けている社会学者の岸政彦氏。ふたりの大阪にまつわるエッセイが交互に記されたのが『大阪』(河出書房新社)だ。両者がこの街でどのような体験をし、どのような記憶や印象を抱いている(いた)のかが綴られている。

 岸氏は大阪についてこんな風に書く。賑やかでガラが悪く、せせこましくて、あくどい、どぎつい、でも親切な街。自由で、気取りがなくざっくばらん。気さくで、ほがらかで、懐が深い。大阪の特質を語るのに、これだけするすると形容詞が出てくることにまず驚く。愛憎半ばする言葉が並ぶが、岸氏はその両方を引き受けてきたのだろう。確かに「愛」ばかり並べるのは、ちょっと嘘っぽいし、うさんくさい。

 社会学者である岸氏は、この学問分野に欠かせない「フィールド・ワーク」を継続して行っている。アンケートや聞き取りにより得たデータをもとに、特定の地区の実態について調査や研究を敢行する。簡単にまとめるとそんな行為だ。岸氏は自分の住んでいる大阪でもフィールド・ワークを行…

2021/2/27

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大阪 / 感想・レビュー

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鉄之助

大阪を"精神"のルーツとする作家と社会学者が「往復書簡」のように交互にエッセイを連ねた、大阪アルアル集だった。気さくで朗らか、気取りのないざっくばらんさが売り、の大阪人。その懐の深さの陰には「暴力と貧困、差別」と同居している人たちがいた。大阪弁は意味の伝達よりも、会話を続けるためにある言葉、という指摘も面白かった。この30年の「大阪の没落」も描いているが、なんだかんだ言っても「やっぱ好っきゃねん」と言ってしまう魅力あふれる大阪があった。

2022/02/12

旅するランナー

作家柴崎さんが「わたしがいなくなった街」大阪で、社会学者岸さんが「わたしがやってきた街」大阪で過ごした日々を書き綴ります。大阪以外の人にはピンと来ない世界ではあろうが、コテコテの大阪だけではない、普通に鬱屈した青春時代も描かれ、共感できなくはないでしょう。映画や音楽に関する思い出には、そうだよねって思えるところもあります。ああ、懐かしの大毎地下劇場・毎日文化ホール...

2021/07/02

trazom

大阪にやって来た岸さんと、大阪から出ていった柴崎さんのリレーエッセイ。馴染みの場所が多く登場して面白いはずなのに、何故か、寂しくて、悲しくて、やるせない気持ちになる。二人が語るのは日本経済が下り坂に差し掛る時代。時代の悲しさを大阪という町が象徴している。朝鮮半島や被差別部落や沖縄の人々が集まってきた大阪は「戦前から戦後にかけての日本の「社会問題」がすべて揃っている街」(岸)だった。でも、同時に「あほでとるに足りない一人の高校生だった私に、大阪の街はやさしかった」(柴崎)。そんなやさしさが悲しい一冊である。

2021/03/19

hiro

「大阪へ来た」社会学者の岸政彦さんと、「大阪を出た」小説家の柴崎友香さんが、交互に大阪を語る共著エッセイ。大阪に興味がない人は、きっと手を出さない本だろうと思いながら読みだしたが、この本を読んで、大阪から出て戻り、出て戻りを繰り返し、もっと住みやすい所もあったにもかかわらず、嫌いなところも多いこの大阪に、なぜ今自分は住んでいるのかと考えた。有名な観光スポット以外の大阪のディープなところを知らない人にとっては、大阪全体を感じることができると本だと思うので、少しでも大阪に興味のある方にはおすすめです。

2021/05/23

アキ

社会学者・岸政彦氏と作家・柴崎友香氏の刊行記念オンライン対談を視聴し、期待して読んだ。柴崎氏と同年代で大学時代大阪で過ごした身から昔のなんばが懐かしく、もうあの頃足繁く通ったウメダの旭屋書店のビルも今はもうないことを知った。街とはそこで暮らした人の生活の記憶と切り離せないものであり、岸氏の「それらはいまもそこにある。でももう、どこにもない」という言葉が見事に言い表している。おわりにで、2人が共著にした訳がのべられているが、妹尾豊孝の一枚の写真の紹介文では伝わらないことを書きたいという柴崎氏の熱い想いを→

2021/02/21

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