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一度きりの大泉の話

一度きりの大泉の話

一度きりの大泉の話

作家
萩尾望都
出版社
河出書房新社
発売日
2021-04-21
ISBN
9784309029627
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「一度きりの大泉の話」のおすすめレビュー

萩尾望都による、一度きりの“レクイエム” ――出会いと別れの大泉時代

『一度きりの大泉の話』(萩尾望都/河出書房新社)

『一度きりの大泉の話』(河出書房新社)は、漫画家・萩尾望都先生による回顧録である。ここには約半世紀の間明かされることのなかった、萩尾先生が九州から上京するきっかけとなった東京都練馬区南大泉にあった二軒長屋での漫画家・竹宮惠子先生との共同生活がどうして終わったのか、なぜそれ以来没交渉となってしまったのか、その詳細が書かれている。多くの作品や漫画家のこと、当時の出来事についても言及されているので、少女漫画の歴史をひもとく上で、また萩尾作品を読み解く上で役立つ重要な一冊であることは間違いない。ただ、とても辛い読書体験となることだけは先に申し上げておきたい。

 なぜこのような本が書かれなくてはいけなかったのか。それは竹宮先生の回顧録『少年の名はジルベール』が2016年1月に出版され、これまでまとめて語られてこなかった大泉時代のエピソードが明らかになったことがきっかけだ。それによってにわかに萩尾先生の周囲が騒がしくなり、封印しておいたはずの当時のことを思い出してしまって体調を崩したり、執筆に影響が及んだりしてし…

2021/5/20

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一度きりの大泉の話 / 感想・レビュー

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パトラッシュ

『少年の名はジルベール』では語られなかった、少女漫画界を大きく変えたレジェンドの友情と破綻のドラマ。自覚した革命家の竹宮惠子と、自覚せざる天才型の萩尾望都が同じ大泉に集った時に衝突は必然だった。理想を目指し苦闘する竹宮は、似たテーマで軽々と自分を追い抜く萩尾の才能を間近で見て盗作の疑いをかけてしまった。焦燥と嫉妬に駆られての暴走だったようだが、自己肯定感が低く繊細な性格の萩尾には50年近く封印し竹宮作品を読まなくなったほどのトラウマになったのだ。人の心の何と難しきものか。対人関係で苦労しただけに痛感する。

2021/06/21

R

エッセーとか、随筆とかではなく、文学的な深みというものはうっちゃって、本当に事実を書いたという本でした。作品とはいわない。非常に興味深い内容だし、ファンにとっては色々考えさせられるところがありそうだけども、もう、大泉という場所でのことはこれ以上語られることはないのだと、その強い意志が伝わってくる、書かれていることへの批評や批判も必要としない、きわめて一方通行な内容だと宣言しているようでもあり、このことについてすり寄ってくる輩への辟易とした感じがうかがえた。今があり、それだけなんだな。

2021/07/19

てら

ほぼ一気読み。「そのこと」へ収束していく前半の緊張感が凄まじい。『少年の名はジルベール』を読んでわずかに引っかかっていた部分が萩尾望都によって明かされる恐怖と納得。そしてモー様は天才なんだけど天才じゃない、ご両親も含めて人間関係に苦悩しながら数々の傑作を描き、そのことで自身も生き延びてきた、常在戦場のソルジャーなんだと理解した。明晰で簡潔な文体が時々乱れるのが核心の部分であり、わかりやすいのと同時に読者の精神を削る。言い方として正しいかはわかりませんが、第一級の史料です。ありがとうございます。

2021/04/24

kaoru

「24年組」は少女漫画の聖域のように語られてきた。だが創作の火花が散るとき傷を負う者も出て来る。大泉での日々は萩尾さんに深い心の傷を負わせた。萩尾さんの才能に竹宮さんは怖れを抱いたのだろうが、その行為にはやはり責められるべき点がある。トラウマを深く沈潜させる萩尾さん、苦しかっただろうが本書を書いたことで解放され創作に打ち込めることを切に望む。「『トーマの心臓』はBLではなく人間関係の混沌としたなにか」という記述にはわが意を得た思いがした。大きな才能を持った人々の努力と葛藤の末の成果を受け止める⇒

2021/05/30

kei-zu

本書の準備が著者にとってどれだけ苦しいものであったか。書名の「一度きり」からもうかがえる。 本書の刊行後、吉田豪が2回にわたってラジオで行った解説が、当時の状況を立体的に浮かび上がらせたものであったと思う。私は聴いている間、ずっと「うんうん」と頷くしかなかった。 解説では「少年の名はジルベール」は、竹宮恵子の萩尾に対する謝罪であったであろうと。一方、本書の刊行の契機の一端になった対談やドラマ化のオファーは、竹宮の意によらない第三者の行為であったという。苦しすぎる。 興味ある方は、上記の解説もぜひ参照を。

2021/07/17

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