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北の愛人

北の愛人

北の愛人

作家
マルグリット・デュラス
Marguerite Duras
清水徹
出版社
河出書房新社
発売日
1992-02-01
ISBN
9784309201788
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北の愛人 / 感想・レビュー

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えりか

ジャスミンの香り漂うインドシナの夜。どこからか聞こえてくる「絶望のワルツ」。官能と悲しみが混ざりあう。絶望的で熱狂的な愛の物語。激しく愛しあいながら、その別れは決まっている運命。人生で唯一の愛。会話も多くなり、一人称が三人称になったりと「愛人」との違いはあるのだけど、とりわけ、より映像的な効果を狙っているように思う。二作は書くに至った経緯も目的も違うのかもしれないが、本当の目的として自らの愛の物語を何度でも何度でも形にしたかったのだろう。それはそこにあったし、今でもあるのだと、何度でも確かめるために。

2017/09/01

しんすけ

錯覚に過ぎないのだが、全編の男と女の会話がベッドシーンであるかのように観えてくる。それはあまりにも美しすぎる。 詩のように綴られているからだろうか。 男は二十七歳の中国人で、女は十六歳のフランス人。だが十六歳は偽りのようだ。 終わり近くで女は、数日前に十五歳になったばかりだと告白する。 男の家は大金持ちで、男は第一夫人が生んだ長男だという。だから男は働くことを知らない。 男ができることは、賭博と阿片と愛人を作ること。それ以外は何もできない。 男は色白で美しい。それが女を夢中にさせたのだろう。

2022/09/12

三人称で描かれる愛の形が、なぜこれほどの読書的快楽をもたらすのだろうか? 『ラマン』とは、中国人青年とのやりとりに違う描写がなされ、そのことが複層的な読みを可能にするのも面白い。

2018/12/01

Shinya Fukuda

メコン川を渡る船上で少女は金持ちの中国人青年に出会う。出会った途端お互いに激しく愛し合う。少女は寮に住んでいるが中国人青年と連れ込み部屋で会い愛を深め合う。少女には母と二人の兄がいる。母は耕作不能の土地を買い殆どの金を失ってしまう。上の兄は粗暴で下の兄を殺そうとする。阿片中毒である。少女は下の兄を慕っている。理由は最終場面で明らかになる。もう一人孤児の少年が出てくる。この家族への忠誠心が強く有能である。少女と中国人青年に別れの時が訪れる。中国人青年が結婚するからだ。中国の仕来りによって既に決められていた。

2024/01/01

ぶるこ

『愛人<ラ・マン>』を読んだのが二年前。影響されて実際にベトナム旅行へ行った。中国人街などは車から見るだけとなってしまったけど、連れ込み部屋のことや街の喧騒、作中のことを思い出しながら見て回った。そして今年『北の愛人』を読み、まるで違う印象を受けた。この作品の中で私はまた違う少女とベトナムを見つけた。私も生涯両方の作品の少女を愛し続けるだろうと思う。そのくらい素敵な作品。

2015/01/11

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