AM/PM
ジャンル
「AM/PM」のおすすめレビュー
アメリカ現代文学の最先端! このアンバランスな世界で見つけた私だけの孤独とは
『AM/PM』(アメリア・グレイ:著、松田青子:訳/河出書房新社)
筆者の文学好きは、16歳の時に梶井基次郎の『檸檬』を読んで受けた衝撃から始まった。しかし、一体それの何が優れているのかと問われると実に返答が難しい。ただ一つ、これは『檸檬』のみならず梶井の作品全般に言えることだが、彼の作品は、人が体験する「瞬間」の描写と深掘りが凄まじい。多少強引な言い方になるかもしれないが、人生とは、リレーのような「瞬間」の繋がり、もしくは「瞬間」がDNAのような螺旋構造を成して伸びているものなのかもしれない。そしてこの「瞬間」を繊細かつ思慮深く切り取るという行為は、文学のみならず芸術全般の根底にある精神であるようにも思える。
『檸檬』について若干熱弁してしまったが、本稿でご紹介したい小説はこれではない。ただし、梶井のようなテイストの純文学に心を寄せてしまう人ならば、必ず鷲掴みにされてしまう作品であると私は保証する。『AM/PM』(アメリア・グレイ:著、松田青子:訳/河出書房新社)という掌編集だ。米国でいま最も注目を浴びていると言っても過言ではない作家、ア…
2018/2/25
全文を読むおすすめレビューをもっと見る
AM/PM / 感想・レビュー
nobi
クリスタルの小さな立方体の3次元ジグソーパズル(があるとしたら)を組み上げて行く印象。それぞれ1から200までの通し番号とAMかPMの文字が刻印されていて、初めて地球上に降り立った宇宙人が蒐集したみたいな地球と人間の生態の数々。気分を害したふりをしている表情、買い出しの習慣の優雅さ、クローゼットの一番下の段…。宗教にも道徳にも人間関係にも何のしがらみも無いプリミティブで研ぎ済まされた感覚。その感覚が捉える悲しみと閉塞感と時に地球外生命的相貌。各ピース間に連環がないではないけれど、いつ崩れてもおかしくない。
2018/03/18
fwhd8325
アメリカの前衛的な映画を見ていると、そこに描かれている日常に、目ではわかっても頭ではついて行けない感覚がある。この作品を小説とするか散文とするかは、どちらでもいい。むしろ活字でありながらフォトグラフィーのようにも感じる。日常を切り取ったシーンが、わからないままでも頭にこびりつくような感覚です。
2017/12/12
阿部義彦
松田青子さん翻訳が一番大きいです!アメリカで今最も注目を浴びる若手のデビュー作。全ては断章のフラグメントよりなり、同じ名前も所々に見えて、話の内容も同じ事の反復だったり、時間の進んだ先のように見える様な話だったり。日本だったら松田青子さんや柴崎友香さんの小説を思い出した。物語を語りたいという小説では有りません。デビュー作なので評価は別れるかも?私は嫌いでは有りませんがまだまだ未消化な部分があるかなあ?とも。最新作は実在したダンサーの事をモチーフとした作品との事。要チェックの作家として記憶に留める。
2017/10/01
あっちゃん
駄目だ、私が俗物過ぎて、この心細い微かな世界を堪能出来ない!(笑)掌編過ぎるのも頭が追い付けなかった敗因か…どちらにしろ、訳者の解説を先に読んでから、読み始めれば多少理解出来たかも(  ̄▽ ̄)
2018/02/07
そうたそ
★☆☆☆☆ 1ページ程度の極々短いストーリーを収めた掌編集。そもそもストーリー性というものすら曖昧な、さもすれば散文といっても過言ではないようなものも多く、というかほぼそうなのだが、個人的には良さがわからなかった。大雑把な言い方をすれば、なんだかオシャレな作品集なのだが、一通り読んでみても、なんだかなあという感じ。この著者の他の作品を読んでみたいところではある。
2017/10/22
感想・レビューをもっと見る