遊覧旅行 (河出文庫 な 7-16 BUNGEI Collection)
遊覧旅行 (河出文庫 な 7-16 BUNGEI Collection) / 感想・レビュー
ちなぽむ and ぽむの助 @ 休止中
知らない町ではふしぎが辻の角で待っている。夜のくだもの屋さんあたたかな電灯に照らされて本を読む少年の姿はまるで檸檬。桜のしたで土に埋めたくて蒸し暑い夏は上海のお酒を片手に夜景をみたい。いろづく葉をみたらどこかに帰りたくて無駄に感傷的雪に散る椿の紅さは不穏なくらい静かだ。煌めくシトロンいつだって疎外されてる気になるのにそれが心地よいのは旅人だと言い訳ができるからかもしれない。もう少年たちとおなじ温度で町をみられないけど、きっとそれも悪くないのです。
2020/11/19
mocha
京都・大阪・神戸「三都物語」からもう20年も経つのか…。キャンペーンのために書かれた、数ページずつの幻想旅行記。ガラス細工のような、繊細でキラキラした言葉が散りばめられている。「三日月少年」もそこここに立ち現れて、短いお話に長野ワールドがギュッと濃縮されている気がする。迷子になりたくなる世界だった。
2016/03/05
(C17H26O4)
旅行先にて、迷い込むように行き着いた場所でほんのひととき異界や冥界との路が開ける。不意に現れた少年は何者か。ああ…あの少年は…。気がつけば少年の姿はもうない。会うはずのないものに出逢ってしまった後、不思議なことが消えてしまった後、怖さよりも情景の中に置いていかれたような気持ちが残り、うら悲しい。夏の午後の黒燿石の影。仄暗い庭の野いばらの蔓。洋墨を流したような碧の水平線。夜天の紅硝子の月。長野さんによる三都物語。
2021/08/22
あきあかね
「幻想」と「現実」のあわいを揺蕩うような掌編。長野まゆみさんの作品は、幻想と現実の比重が作品によって違っていて、現実の方に軸足を置きつつ、時に幻想がちょっと顔をのぞかせるという塩梅が自分にはしっくりくる。 舞台は神戸、京都、大阪といった実際の場所であるが、異国情緒や古都といったイメージを残しつつ抽象化されている。洋館のたたずまいの残る神戸旧居留地の画廊で、精巧な自動人形のオブジェを案内してくれた少年が最後に「僕も」と云い微笑して去っていった話。十年前の京都の修学旅行で食べた「宇豆良登理(うずらとり)」⇒
2020/03/29
まゆら
再読。大阪旅行の最中に「遊覧」の部分は読んだ。確か単行本の方にはそれぞれ舞台の場所が明記されてて、どの都市の話か判ったはずなんだけど、文庫では書かれてないようで、あるほうがいいのになぁと思ったり。内容は実在の場所がまるで異世界かのような不思議で幻想的な話で浮遊感にクラクラしました。
2015/07/08
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