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また会う日まで (河出文庫)

また会う日まで (河出文庫)

また会う日まで (河出文庫)

作家
柴崎友香
出版社
河出書房新社
発売日
2010-10-05
ISBN
9784309410418
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また会う日まで (河出文庫) / 感想・レビュー

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なゆ

“せつない一週間の東京観光”とあったけど、そういうココロの揺さぶりはない。せつないとも違う、フクザツな感情よね。高校生の頃のほの甘い記憶を、なんとなく確かめようと東京に行った有麻。言葉で言い表せない気持ちってのは確かにあって、説明すればするほど意味不明になったりもする。有麻の気持ちも、きっと有麻にしかわからないのかも。それよりも、久しぶりに会う鳴海くんとの距離感や、成り行きで一緒に過ごすことになる凪子やマルコさんとのやり取りも面白い。カメラのように、貴重な一瞬一瞬を見つめたいと思うとこ、柴崎さんやなあ。

2018/12/16

翔亀

大阪という街の歴史の重層性により男女の恋愛の機微を表現した「その街は今」と<対>になる作品。双子の都市論小説を狙って対照的に書いたのではないか。こちらは、東京という街の、歴史でなく瞬間を、古い写真によるのでなく眼前を切り取るカメラによる、住み着いたことからくる重層性でなく一週間だけの逗留からくる表層の描写により、恋愛の機微ではなく何とも言い表せない(剥き出しのでない微かな)性愛の微妙な機制を、絶妙に表現していて、脱帽した。好みとしては、一方の大阪の描写、他方の性愛の描写を選ぶ。ぜひこの二作はセットで。

2014/10/25

ほほほ

表紙に惹かれて。大阪の会社に勤める主人公が、1週間の休暇をとり東京に滞在するお話。東京旅行の目的は、ずっと心のどこかにいた「気になる」男の子に会くため。恋人同士になるわけではない、でもなにか感じるものがある、他の人とは違う感じがある、そんな異性。色気のある会話ややりとりはなにもないのに、主人公と相手の男の子の間の空気にはなんとも言えない甘い含みがある。言葉にできないモワ〜っとしたときめきを味わわせていただきました。主人公みたく瞬間瞬間も小さな気持ちも大切にして生きていきたい。

2015/04/04

エドワード

26歳の若者にとって高校時代はつい先日だろう。大阪から一週間の東京観光に来た有麻は、高校の修学旅行が忘れられない。夜の心理テストで感じた鳴海くんとの不思議な絆。「こんなにしゃべってた?前」「うん、何か変やと思った」そんな彼との再会の瞬間が実に自然でいい。男子の家に普通に泊まれる有麻、淡くて瑞々しい男女の間柄がいとおしい。山手線、はとバスでめぐる東京タワー、浅草。大阪人の視点で見る東京が柴崎友香さんらしい。物語は唐突に終わるけれど、続きの余韻が感じられる。それは「また会う日まで」という言葉のおかげだろうね。

2021/03/03

やまはるか

 わたしは会社を休んで一週間、東京の男友達の家に泊まる予定。その間に高校時代に好きだった鳴海くんに逢う。一週間が、日記風に月曜から土曜まで章分けして綴られる。泊めて貰う男友達とは「なんもないっすよ。ふつーに友だち」。相手の裏切で失恋した後、新しい恋人が出来たらしい駆け出し女優の李花ちゃんを「そっかあ。やっぱり、そういう人がいるといいよね。もう、次だよ。次、行ってみよう。なんでも聞いてよ。ストゥージーズ、貸すよ」と大声で励ます。この場面に感動するぼくは何か変かも。川上弘美の古道具屋でも似た個所で感動した。

2023/12/08

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