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貝のうた (河出文庫 さ 29-1)

貝のうた (河出文庫 さ 29-1)

貝のうた (河出文庫 さ 29-1)

作家
沢村貞子
出版社
河出書房新社
発売日
2014-03-06
ISBN
9784309412818
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貝のうた (河出文庫 さ 29-1) / 感想・レビュー

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mymtskd

生まれてから37才の終戦の日までの若き日の自伝である。それにしても何と聡明で清々しい人だろう。名門女子大を中退する時も、巻き込まれるように獄中生活を余儀なくさせられる時もあっさりと気負いがなく自然体、それでいて情に厚く何事にも丁寧で一生懸命なのだ。こういう姿を粋というのかも知れない。

2020/07/02

Galilei

疫病、貧困、戦争、思想弾圧、地震・・・現在の世界を取り巻く悲劇よりも、厳しい苦難に耐えた明治人に逢いたくて、半読みの本書を今再び。▽祖父母や大学教授をはじめ、明治人に触れた最後の世代ですが、どなたも物事に動じず一徹なのは、本書にある、”おていちゃん”の幼い頃の躾からと思います。職人や商家など堅気の世間からは縁遠い芸人世帯にもかかわらず、女子大から左翼運動の芝居へ。本書の多くを占める左翼運動と弾圧の監獄暮らしには、先の一徹だった貞子の家庭の片鱗を感じます。でも、朝ドラ”おていちゃん”は楽しかったです。

てれまこし

転向文学の白眉ということで読んでみたが、特に興味深かったのは父親との愛憎関係であった。芝居にしか興味がなく自分や母を愛してくれない父への反発から教師を目指すが、結局女優になってしまう。革命運動への参加も、どうも親への反発と無関係でない。そして恐らく転向も(「お前の親は泣いておるぞ」は転向の殺し文句)。考えてみれば、人類の歴史は階級闘争より前に世代間闘争がある。プラトンの哲学もロシア近代文学も世代間闘争から生れた。明治維新のごときも若者の老人支配への抵抗である。社会とは親が子の尊敬を失わないかぎりのもんだ。

2018/07/13

Yumi Ozaki

沢村貞子さんはとても印象的な女優さんだと思います。この本を読んでますます素敵な方だと思いました。

2022/05/01

ん〜ひげ剃ってるよ

明治から大正にかけての浅草には,まだ江戸庶民の文化が残っていた。着物での生活や粋な美意識とともに,制約された女性の生き方もそれだ。貞子さんは女らしさにとらわれるのではなく,誠実に自分の生き方を貫こうとする。女学校への進学も社会主義活動も脇役役者人生も,彼女の一本筋の通った意志のあらわれだろう。しかし,戦後になって貞子さんは,芝居の中に描かれるような恋を,女としての幸せを求めようとする。二枚貝の片割れを求める気持ちは,時代の波に流されることなく,江戸庶民も昭和の人間も変わらないということなのだろう。

2021/03/21

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