読みたい本がここにある

Facebook Twitter LINE はてブ Instagram Pinterest

薄情 (河出文庫)

薄情 (河出文庫)

薄情 (河出文庫)

作家
絲山秋子
出版社
河出書房新社
発売日
2018-07-05
ISBN
9784309416236
amazonで購入する Kindle版を購入する

薄情 (河出文庫) / 感想・レビュー

powerd by 読書メーター

ヴェネツィア

高崎を中心とする群馬の、いたってリージョナルな小説である。ここに登場する地名は、さすがに高崎や前橋などはわかるが、山の名前以外は大半が初めて聞くもの。絲山秋子は現在は地元民だけあって道路状況も縦横無尽。生粋の群馬県人も顔負けの様子。さて、物語は2017年2月14日の記録的な豪雪に始まる。閉塞感の象徴のようにも見えるが、そうではないだろう。またタイトルの示す「薄情」は関係性の希薄さ、ややもすると無関心になりかねない危うさの中に生きる主人公の宇田川の心証を表象するものかと思う。

2020/01/06

タカユキ

神社の跡取りとして手伝いながら一年のうち5ヶ月は嬬恋でキャベツの収穫をする群馬在住の人と深く関わることが苦手な三十代の宇田川。地元にいながらも地元民との関わりも薄いものにしかならなくて、地元外の人たちの人間関係を新たに開拓しても自然と消滅に向かう。著者の地元である群馬の文化や空気が伝わってくる文章。新たな人と関わることによって感じる人との距離感。自分の住む町と都会の距離。そして心の境界線とは、いったい何だろうと考えさせられた。

2018/10/18

thayami

時間軸で対比する自己。過去が過去のままか、未来となるか。これが不在と実在。表題は、自身の未来への心の在り方ではなかろうか。表層的な客観性と心底との乖離が表題。人との交錯が、自身と向き合う土壌。表層的には瑞穂/カズシとの出会いと別れであり、深層的には蜂須賀/鹿谷の”事件後”の動向。それぞれ前者が動的、後者が静的に心に染み込んでいく感。最後の件の”地方”。様々な暗喩が、頭に浮かぶ。静生が踏み出した一歩は、開かれた道への前向きさではあるが、同時に、現実の暗部を踏まえて生き抜く決意表でもある気がする。

2018/10/17

アマニョッキ

絲山さんの描くダメ男がめっぽう好きなわたしでありますが(吉田修一のそれも好き)、今回の宇田川もとても良かった。一見無知で散漫そうな男が、実は密度のことを考えながら一服してるなんてもうどんだけセクシーなん。「多数決で負ける脳の野党」とか「自覚できないほど弱い毒」とかの絲山さん語録も良ければ、「北軽井沢といっても群馬県」だとか「長野原と長野県」だとかの考察もすごく面白い。禅問答のごとき宇田川の思考の海に、わたしも潜ったり沈んだりたまに顔出してみたり。とても不思議で心地よかった。そして群馬に行ってみたい。

2019/01/07

ひ  ほ

絲山さん 2冊目。他人への深入りを避けて日々を過ごす宇田川に訪れた、ある出来事。土地が持つ優しさと厳しさにそっと寄り添う傑作長篇。 心に余裕がないのかしら? そっと寄り添うことができなかったのが残念。

2019/03/05

感想・レビューをもっと見る