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黄金の少年、エメラルドの少女 (河出文庫 リ 4-1)

黄金の少年、エメラルドの少女 (河出文庫 リ 4-1)

黄金の少年、エメラルドの少女 (河出文庫 リ 4-1)

作家
イーユン・リー
Yiyun Li
篠森 ゆりこ
出版社
河出書房新社
発売日
2016-02-08
ISBN
9784309464183
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黄金の少年、エメラルドの少女 (河出文庫 リ 4-1) / 感想・レビュー

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KAZOO

この作者の作品集を読むのは「千年の祈り」に続いてのもので9つの作品が収められている短編集です。前作で非常に感銘を受けたのでこの作品を手に取りましたが外れなしです。中国での出来事を英文で発表している作家ですが、現在の中国の状況をよく書かれています。特に最初の「優しさ」と「獄」は物語としては非常に優れたものだと感じました。両方とも賞を取っているのですね。将来のノーベル賞候補でしょう。ウイリアム・トレヴァーに影響を受けているということなので彼の作品も読んでみたい気がします。

2016/11/05

(C17H26O4)

『優しさ』が特に静かに胸を打つ。心を閉じて生きてきた40代の主人公。おそらく彼女はこれからも孤独を好むようにして生きていく。そういう生き方しかできない彼女はしかし、不幸だったわけではない。回顧する。人生の中で触れてきたいくつもの優しさを思う。決して恵まれていたとはいえない日々であったが、人生が交差した人たちとのこと、それらの中の優しさを思う。彼ら彼女らの優しさを思う。主人公が感じているということになにか救われる。優しさを感じる心がわたしの中にもあると思えて。『優しさ』このタイトルが読後また深く沁みる。

2022/03/03

metoo

贅沢な短編集。才能が溢れる。洗練され、温かい。観察眼優れ、文章が響き合う。「優しさ」は、軍に入隊した経験を持つ北京に一人で暮らす41歳の女性が過去を回想する。著者リーの人生に重なる部分がある。読書の楽しみを教えてくれた孤独な杉教授、入隊した女性達、様々な人生が交錯するが、望まれても誰とも深く関わらなかった私。優しさごっこをするのが優しさではないのでしょう。他8編、どれも中国の昔と現代、貧富の激しい階級社会、インターネット漬け、孤独な都会の人々、様々な視点から人々へ温かい眼差しが向けられている。

2016/04/23

Willie the Wildcat

全作品の共通項は「孤独感」。悲喜こもごもの過去の経緯が齎す差異。経緯の根底に愛情。『優しさ』の主人公の”静かなる”葛藤が印象的。古代言語が、母の証であり起点。教授と中尉の海外文献の”表裏”を経て辿り着く南の歌(詞)。「文字」ですね。次に『花園路三号』は「音」。気付くと起点に立ち戻っている主人公の二人。常氏、運命の縛りが解けたかな。最後に表題。無意識に積もった家族や愛情への不安。気付くと、居場所探しする中でのめぐり逢い。光を求め、支えを模索し、一歩踏み込む。母が吐露する件が最後の砦という感。

2019/10/01

nobi

峻厳な漢詩のような一文一文。超然として悔恨も謝罪の表明もない。「優しさ」を拒絶する18歳の孤独は近寄り難く孤高の隠士を思わせる。ただ末言(モーイエン)の無表情の下の感受性は、20余年を経た後も杉教授、魏中尉の声音を、一瞬の内に変化する表情を鮮やかに記憶している。その事実の積み重ねそのものが彼らへの鎮魂の言葉として立ち現れる。そしてともかくも汽車を追ったタクシー運転手。彼の直立不動は彼女の硬い孤独の殻を打ち割る力があった。「優しさ」以外にも原初のエネルギーを感じる。特に中国の貧困が最新の代理母を担う「獄」。

2017/01/28

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