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舞踏会へ向かう三人の農夫 下 (河出文庫 ハ 10-2)

舞踏会へ向かう三人の農夫 下 (河出文庫 ハ 10-2)

舞踏会へ向かう三人の農夫 下 (河出文庫 ハ 10-2)

作家
リチャード・パワーズ
柴田元幸
出版社
河出書房新社
発売日
2018-07-05
ISBN
9784309464763
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舞踏会へ向かう三人の農夫 下 (河出文庫 ハ 10-2) / 感想・レビュー

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えりか

知識量と複雑な人間関係につまずくが、すごい物語とかしかいいようがない。これは二十世紀の物語。ぬかるんだ道に立つ三人の農夫。この写真を発端として進む3つのストーリー。それぞれのストーリーが大きく広がっていくものの、複雑な人間関係を形成しながら、バラバラであった三つの物語は繋がっていく。その繋がっていく過程に心奪われる。また戦争や技術革新の二十世紀という大きな歴史のうねりを描きながら、それに巻き込まれていく、三人の農夫たちの運命が見事に描き出されている。彼らが向かう先は舞踏会という名の暴力と変化の二十世紀。

2018/07/28

ヘラジカ

ここまでの力作が、作者自身は読まれることを想定していなかったとは驚きだ。確かに持てる知識とエネルギーを全てつぎ込んだ感のある作品だが、目的や構想がしっかりしているからか整然とした印象を持つ。三つの時間軸と物語の僅かな"ズレ"は立体化させる為の試みだとは、なんて技法的な作家だろう。該博な知識も併せるとやはりピンチョンを思い起こす。読者を視ていないにも拘らず、ミステリー仕立てで読ませるストーリーを完成させているのも素晴らしい。これがデビュー作だなんて世界にはとんでもない作家がゴロゴロいたものだ。

2018/07/10

tokko

アウグスト・ザンダーの一枚の写真から壮大な物語が紡ぎ出される。ペーター、アドルフ、フーベルトがどのようにしてこの写真に映るに至ったか。そしてどのようにこの後の人生を歩むことになったのか。そして彼らが生きる二十世紀は一体何だったのか。戦争と消費社会、情報産業にオートメーション…。実在の人物ヘンリー・フォードやサラ・ベルナールなどを巧みに登場させ、どこまでが本当でどこからが創作か(そもそも本当ってなんだろう)境界線も歪みも感じさせない力作。歴史や記録についての考えが揺らぎます。

2018/08/01

おおた

やっぱりパワーズとの相性わろし。写真1枚から20世紀を浮かび上がらせるというのだけど、逆に考えると実在の文化人3人が中途半端に使われて終わっている。物語の中心から外れたところをぐるぐる回り続けて結局たどり着かなかったという印象。「小説のテーマ」とかではなく、あらゆるものを3つに分けたことがネガティブに、薄まって働いているように読める。写真複製からの情報論も現代から見ると過去の1シーンどまりで、それやるなら21世紀へのつながりを見せてよ、と中途半端さが否めない。

2018/08/14

ふるい

なかなか流れに乗れず、再読なのに二週間ほどかかってしまった…。でもよかったです。一枚の写真からどんどん物語が(あるいは歴史が)増殖していき、作者と読者が共犯関係を結び、大きなカタルシスに到達する。20世紀=暴力の世紀ならば、三人の農夫がカメラの向こうに見て恐怖したものは、いったい…。最後のメイズのパート、穏やかな希望に満ちていて好きだ。あとどうでもいいけど私、これを書いた当時のパワーズの年齢と今同じ歳です(24)。世界を意識するお年頃?なのかなぁ。

2018/08/22

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