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テヘランでロリータを読む (河出文庫)

テヘランでロリータを読む (河出文庫)

テヘランでロリータを読む (河出文庫)

作家
アーザル・ナフィーシー
市川 恵里
出版社
河出書房新社
発売日
2021-11-05
ISBN
9784309467436
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テヘランでロリータを読む (河出文庫) / 感想・レビュー

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Shun

著者は欧米留学後、1979年のイラン革命直後に母国へ戻りテヘラン大学教員となるが、ヴェール着用を拒否したため追放されてしまう。著者の知る母国は様変わりし、イスラムの厳しい戒律の復活でヴェール着用等の不自由を強制され、それは欧米の自由な気風を知る著者には耐えられないものであったろう。そして自由が失われ再び戦争が始まったイラン国内で著者は秘密の読書会を開きます。苦難を生き抜くため、人間の本質を知るために、文学を学ぶことの意義が様々見つかるような得難い読書となった。”テヘランでロリータを読む”意義はとても深い。

2021/11/13

きゃれら

書店で平積みされているのを見てタイトルの違和感に惹かれた。西加奈子さんの帯の言葉もいい。この本へ向かうため「ロリータ」「デイジー・ミラー」を読んだ。そしていよいよ手にとったら、文句なしに素晴らしかった。語り手を始め、イランに住む女性たちの人権環境は、イスラム圏外の常識では理不尽で劣悪としか言いようがない。ベールを取って外へいるだけで投獄され処刑される恐れもある中、禁じられた「退廃的な」文学の読み解きに挑む女性たち。作品たちに対する深い読みには圧倒された。読み友さんへ、未読だったら強くオススメしたい。

2022/06/28

chanvesa

「共感の欠如こそが現体制の中心的な罪であり、他の罪はそこから生じたものだと思う。(367頁)」「他者の問題や苦痛に気づかないことこそが最大の罪なのです。(218頁)」「文学を読むことで、人は初めて他人の身になり、時に矛盾する他者のさまざまな側面を理解することができ、人に対してむやみに無慈悲にならずにすむ。(193頁)」イスラーム革命後のイランの、特に女性にとって悲惨な時代に、文学と接することの意義を痛感させる言葉である。『ロリータ』を、ロリータに即して読んでいく彼女たちのような読み方は想像できなかった。

2023/02/04

かふ

イスラムの戒律が厳しい社会で大学が砂漠のオアシスのようなサロンとしての文学、平安貴族の女性作家たちのサロンを連想した。例えば後鳥羽上皇が『新古今集』を作らせたような幻想の世界だったのかもしれない。あまりにもアメリカの自由主義ばかりなので、その裏にある政治性は見えてない感じだ。イラクのフセインがイランに戦争を仕掛けてきたのもその裏にアメリカがいたからだ。『ロリータ』についてもナボコフ視点よりも「ロリータ」視線でイランの権力者から逃走する少女の物語として読む。亡命文学者としての共感があったのだろう。

2023/07/14

毎週木曜日の朝。大学教員宅で「イスラーム共和国では許されない自由をあたえてくれる特別なクラス」が開講された。二十世紀の終わりに開かれたこの秘密の読書会では、大学教員のほか七人のイラン女性たちが、ナボコフやジェイムズ、オースティンについてざっくばらんに議論した。西洋的なものは退廃的と見なされ、イスラームの文化を堕落させる帝国主義的なものが禁じられた時代に、検閲官の目をのがれ、自由な服装で自由に文学について語る会。どれほど貴重な場だっただろう。イラン女性たちの内面を率直に綴った、読み応えのあるドキュメント。

2022/09/25

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