ラスト シネマ (光文社文庫)
ラスト シネマ (光文社文庫) / 感想・レビュー
紫 綺
死にゆく友のために実行したひと夏の大冒険?飄々とした語り口がクールだ。ふと自分の過去を振り返り、一瞬でも輝いた時はあったのか・・・自問自答してしまう。あったのだろうな。見えないものは見えたのだろうか。でも今は何故か虚しい。
2015/07/03
新地学@児童書病発動中
辻内智貴の作品はどれも素晴らしい。優しさと温かさが心に沁みる。かって映画に一度だけ出た経験を持つ雄さんを励まそうする小学三年の私が奮闘する。雄さんの命は癌により尽きようとしている。それは誰にも止めることはできない。それでも登場人物達は、雄さんが自分の人生で一度だけ輝いた瞬間を甦らせようとする。その優しさはどんな人でもほろりとするだろう。人間の善意をもう一度信じたくなる素晴らしい作品だった。
2018/03/30
chimako
一度目はゆっくりと噛み締めるように、二度目は一気に、三度目は好きなお酒を少しずつ味わうわうにこの230ページほどの本を読んだ。思わず頬が緩む場所、早く早くと気がせく所、鼻の奥がつんとする所……いつも同じ。そして、頭の中を映像が流れる。人は本来優しいものだとほっとする。自分のためではない誰かのために必死になれる広さと深さを持ち合わせているんだとありがたいような気持ちになる。生きることの意味、死ぬこと、幸せ。働かない父親の言葉は辛辣で底無しに暖かい。この父親は永瀬正敏。雄さんは伊勢谷友介。どうだろう?
2016/06/06
ぶんこ
心温まる2編でした。余命いくばくも無い雄さんの為に、たった1本出演した映画を探し続ける哲太。辻内さんは悪人が書けないそうですが、私はできるなら悪人が出てこない小説の方が好きなので、辻内さんの作品をこれからも読み続けようと思いました。地方の都市で育った哲太の映画への憧れ、東京に出て映画の世界にいっときでも携わった雄さんへの思い。それを支える一見だらしない父親と、有楽座の館主、民江ちゃん。社会の掟破りのような事でも、後でキチンと責任をとる覚悟で立ち向かう姿が痛快でした。「中村正太郎さんのこと」も良かったです。
2017/03/14
miyumiyu
辻内さんの作品は、どれも「何のために生きるのか」「何が一番大切なのか」を読みやすい文章で訴えている。映画に映った雄さん、最後に自分の姿を見た雄さん、何度も涙が出ました。雄さんに見せたいがために、とんでもないことを思いついた哲太の父。何やってんだと思いながらも、こちらもワクワクしながらページをめくりました。みんな精一杯悔いなく生きた。読後感は爽やかでした。読んだのは3作目ですが、私はこれが一番好きです。
2013/02/21
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