トリップ (光文社文庫)
トリップ (光文社文庫) / 感想・レビュー
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角田光代の連作短編集は、いつもスルスル引き込まれるように読むことができる。ところが、この作品はスルスル読ませてくれない。それどころか、苦虫を噛み潰したような嫌な気持ちにさせられるのだ。たぶん、見てはいけないものを見てしまった気持ちちなるからだ。駆け落ちしそこねた女子高生。LSDを飲んで日々を過ごす主婦。好きな人をずっと追い続けている男。はたから見るとわからない。でもその内情は…という部分を見せられるとゾッとしてしまう。身近にもあるかもしれない。だから、すごく怖いと思ってしまうのだ。
2018/03/29
エドワード
東京近郊の古ぼけた商店街がある街。ここに暮らす老若男女。何かがずれてしまって、本来の「ビジョン」からはずれた自分にとまどっている。駆け落ちできなかった女子高生。肉屋になるはずではなかった奥さん。花屋の野村典生君のエピソードはちょっと辛いね。うまくいかないお見合い。「カシミール工場」は意外な展開。ある話の主人公が別の話の主人公を見ている光景は角田光代がよくやる趣向だ。私たちの隣人の日常を切り取った物語が次々と現れる。
2011/09/30
hnzwd
自分の居場所はここではない、と思いながら、それを打破する力もなく、鬱々と日々を過ごしている男女10人の連作短編集。それぞれの話の主役が前の話ではモブだったりとゆるくは繋がるのですが、、全話救いが無いという。言葉選びや、ちょっとずれてて笑える主人公や会話は、私のイメージと重なるのですが、、読後の閉塞感。角田さんの本には元気を貰える事が多かったので、ちょっと辛かったかも。口直し本を読まねば。。
2016/08/19
団塊シニア
登場人物が次の短編につながっていく話で内面に抱える日常とのズレを感じる主人公が見事に描かれてる、実際のページ数の何倍も世界が膨らんでいくのがよい短編小説だと筆者がいってるがまさに本書はそんな感じがします。個人的には「ビジョン」が好きな作品です。
2013/10/12
コージー
★★★☆☆鬱々とした日常を描いた連作小説10作品。駆け落ちしそびれた高校生、クスリにはまる主婦、大学の同級生を追いかけるストーカーなど。個人的には好きだが、万民うけはしなそうな、気だるさ絶好調の小説である。とにかく、よくここまで多くのペルソナを演じることができるなぁと感服した。【印象的な言葉】大事なのはそこにいるのがだれかではなくて、あたしの掌がだれかとつながっていることだ。
2018/10/05
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