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アガタ,声 (光文社古典新訳文庫 Aテ 3-1)

アガタ,声 (光文社古典新訳文庫 Aテ 3-1)

アガタ,声 (光文社古典新訳文庫 Aテ 3-1)

作家
デュラス
コクトー
渡辺 守章
出版社
光文社
発売日
2010-11-11
ISBN
9784334752187
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アガタ,声 (光文社古典新訳文庫 Aテ 3-1) / 感想・レビュー

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NAO

フランス人作家二人の、一幕ものの戯曲二作。デュラスの『アガタ』は、ムジールの未完の長編『特性のない男』の主人公ウィルリヒと妹アガーテの近親相姦に触発されて書かれた。デュラスは、自分とすぐ上の兄との愛情もこのようであるべきだと思っていたという。コクトーの『声』は、女性がただ一人受話器に向かって話をしている。まだ交換手が電話をつないでいた時代、焦る女性の気持ちそのもののように、通話中に電話は何度も混線する。語っているのは女性だけなのに、相手の言葉その口調まで聞こえてくるような焦燥と、哀しみ。

2019/11/20

藤月はな(灯れ松明の火)

読んでみたけど、よく、分からない観念的とも言える戯曲。「アガタ」は波の残響のような会話によって指先で互いの輪郭をなぞる様に見つめる、兄妹の近親相姦的関係が徐々に浮き上がってくる様はとても官能的。「声」は電話で語りかけるという形式なためか、一方通行にしか聞こえない会話とその会話が奏でる空気が徐々に歪みながら固まるような感覚になぜか背中がゾクゾクして震えました。

2014/06/17

えりか

『アガタ』一つの永遠に壊れることのない愛の記憶を互いに語り合う。愛の純粋とその愛による後ろめたさ。互いの記憶を補いあうかのように、またはその記憶に飲み込まれてしまわないように、注意深く新しく過去を作り出すかのように。ねぇ言って、ねぇ話して、ねぇ聞かせてと。触れあうことはない、目線すら合わせられない。そうしてしまったら、もう離れられないから。こんなに近くにいるのに、会話だけの哀しい二人。それは絶望。でもそこには、酔いしれるほどの官能があった。

2016/05/05

松本直哉

「声」の感想。私の小さいころは市外通話は交換手が必要で、他県に住む祖父母の懐かしい声を聞くまでの数分間の待機も混線も覚えている。タップするだけで相手を呼び出す今では想像しにくいことだろうか。しかし例えばツイッターで、話したい相手にメンションしても気づかれなかったりはぐらかされたり、そのうちに無関係の人が横から入ってきてスレッドが複線化することはよくあり、その返信が第三者に非公開だったりすると、混乱した独白を読まされることになる。これはそんなテクストで、当人は必死なのに聞く方はその支離滅裂に当惑する悲喜劇。

2020/08/31

松本直哉

繰り返される「ゆっくり」のト書きが劇全体をひとつの緩徐楽章のように思わせるデュラス「アガタ」。 tu と vous を頻繁に行き来しつつ、ためらいがちに、手探りのように、しばしば沈黙に満たされながら一組の男女の交わす会話は、繊細な二声のインヴェンションのようにきこえる。海、浜辺、河、夏の昼寝、青い夏服、青い目、ブラームスのワルツなどのモチーフが、兄と妹の、口づけの一歩手前までの距離を静謐に描き出してゆく。くりかえしほのめかされる出発は、ふたりを、あるいはそのどちらかを、どこにつれてゆくのだろうか。

2020/08/30

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